
「S660(ロクロクマル)」(ホンダ)、「GR86(ハチロク)」(トヨタ)…。スポーツカー好きに人気の車種だ。スポーツカーだけのレンタルカーショップ「ファインドライブ安曇野」が8月、安曇野市穂高に開店した。運営するのはオーナーの西山伸夫さん(40)と妻で店長の亜美さん(34)だ。
スポーツカーが大好きという西山さん。アルプスの眺めに引かれ2018年移住し、整骨院を開いた。子育て、開業で一時はスポーツカーを手放したが、21年購入。再び、とりこになった。
燃費が悪い、維持費が高い、トランクが狭い-など、マイナス要素もあるが、魅力は計り知れない。スポーツカーを通すと、安曇野の自然や空気が引き立つので、観光促進にも役立てばと張り切る。
西山伸夫さんがスポーツカーに興味を持ったのは16歳の時。車がテーマの漫画、アニメの「頭文字(イニシャル)D」を見て憧れた。免許を取り18歳で「シルビア」(日産)を手に入れた。その後オープンカーの「カプチーノ」(スズキ)、「180(ワンエイティー)SX」(日産)に乗った。「スポーツカーの魅力は見た目の格好良さ、エンジンの鼓動、自分の思い通りに車が動く一体感」と熱く語る。
妻で店長の亜美さんが塩尻市出身ということもあり、2018年、東京から安曇野市へ移住、「安曇野にしやま整骨院」を開いた。当時の愛車180SXは手放したが、開業の忙しさが一段落すると、スポーツカー好きの気持ちがうずき出した。21年、「S660」を購入。「信州の道はスポーツカーで走ると楽しいことに気づいた」という。
地球環境保全、二酸化炭素(CO2)排出量削減のため、世界的にも電気自動車、ハイブリッド車の性能向上が期待されるようになった。事故を少しでも減らそうと、安全装備が多く付いた車に注目が集まる。今、純ガソリン車、マニュアルのスポーツカーは肩身が狭い。騒音規制法の規制値が2022年に厳しくなったことも影響し、生産中止に追い込まれた車種もある。西山さんはそんな状況に心を痛める。「車本来の魅力が薄れてしまうのではないか」
スポーツカーの素晴らしさを伝えたい、安曇野を車で楽しんでほしいという思いが、スポーツカー専門のレンタル店を始めた原動力だ。ラインアップは「S660」「GR86」に加え、「ロードスター990S」(マツダ)、「スイフトスポーツ」(スズキ)の計4台。来年秋には、納車まで2年待ちという「シビックタイプR」(ホンダ)が仲間入りする。
「信州は狭い道が多いため、軽量で思いのまま操れる車種を選んだ。基準は『自分が乗りたい車』です」と西山さん。
格好良い車に乗るわくわく感。すてきな車を運転した満足感。レンタルで運転するスポーツカーが、こうした感覚をドライバーに与えてくれれば-と期待する。
オープンカーで信州の風を感じ、普段は乗らない車種の運転を楽しむ。そうした経験が安曇野の観光振興につながればという思いも強い。「安曇野にはドライブして楽しい道やスポットがいっぱい。スポーツカーで日頃できない体験をし、リフレッシュしてもらえたら」というのが、西山さんの願いだ。
【ファインドライブ安曇野】
平日午前9時半~午後6時、土日曜・祝日午前9時~午後5時半。月・木定休。予約制。レンタル料は1日(最大8.5時間)1万2100円~。23歳以上で、MT免許取得後3年以上が条件。予約、問い合わせはホームページから。