相撲愛で土俵修復 深志高3年村上さん

松本市の松本深志高校の校庭西隅にある土俵(相撲場)。屋根付きの立派なたたずまいだが、少なくとも15年以上使われておらず、傷みが目立っていた。この土俵を気にかけ、修復や手入れに励む生徒がいる。「直すのは相撲経験者の自分しかいない」。3年の村上康生さん(18、塩尻市)は相撲愛と使命感に燃え、地道な作業をこつこつと続けてきた。
夏休み中の昼下がり。村上さんは、土俵にたまった落ち葉や周りの雑草を除き、水をまいて竹ぼうきで掃きならす。ほぼ毎月続けており、手際がいい。
希望に満ちた入学式当日、土俵に足を運んだ。俵が土に埋まり、外れて落ちたものもあった。「足がかからず、土俵の体をなしていない。切なかった」
小中学校時代に「信州塩尻相撲クラブ」で相撲に打ち込み、高校では陸上部に所属。放置された土俵を探究学習のテーマにし、修復や活用を決意した。校友誌などを調べ、卒業生の教員らに尋ねた1年時のまとめによると、1903(明治36)年に誕生した相撲部は、76年以降に消滅。相撲はクラスマッチの一種目として長く行われたが、現在は外れている。土俵は2000年の校舎改築の際、中庭から今の場所に移されたという。
昨年1月、土俵修復や整備の経験がある同クラブの小林雄矢監督(34)と、村上さんの父、聡さん(48)の力を借り集中的に整備。相撲を取れる状態にし、以後も手入れを続けた。密着取材した同校放送愛好会の作品は、昨年のNHK杯全国高校放送コンテストのラジオドキュメント部門で全国4位に入った。
「土俵がある高校は県内でもわずか。活用が相撲人口を増やす糸口になれば」。よみがえった土俵で小学生大会を提案したが、条件が整わず今年は断念した。だが、在校生らの認知の高まりを収穫と感じる。大学受験を控え、整備は一区切り。後継者の出現を願う。教職を志す村上さんは「この経験も生かし、相撲の裾野(すその)を広げられたら」と前を向く。