
「よしっ!」「惜しい」。にぎやかな声と「コン、コン」「カカカッ」という軽快で小気味よい木の音が、室内に共鳴する。集まった人々が手に持つのはけん玉。技を磨き、対戦を楽しむ。大町市の神栄町公民館で月2回ペースで開かれている、けん玉コミュニティー「北アルプスkendamas」の様子だ。年齢や経験を問わず交流できる。
今夏の「ウッドワンけん玉ワールドカップ(W杯)廿日市(はつかいち)」で県勢過去最高の4位に入った大町岳陽高校1年の西澤怜也さん(15、同市大町)と、父の伸雄さん(54)が、8月に始めた活動。世界の頂点を目指すプレーヤーが、地元からけん玉の魅力を広げる。
「すごい先輩」に刺激を受け成長
「右足を少し前に出して」「いいよ、いいよ」。初めて参加した安曇野市の小学4年の男子児童に、声をかける西澤怜也さん。振り出したけん先を玉の穴でキャッチする技「飛行機」のこつを熱心に指導していた。当初はよそよそしかった男児だが、誘われてゲームなどを楽しむうちに打ち解け、トッププレーヤーに技も教わり、笑顔で帰路に就いた。
「(近所の子だけでなく)見ない顔も来てくれる。いいなあ」。怜也さんの顔がほころぶ。けん玉コミュニティー「北アルプスkendamas」の集まりは原則として第1、3月曜の午後6~8時で、参加費は1回100円。課題などは設けず、個々の目標に向けて技を磨いたり、対戦したり。一般社団法人「グローバルけん玉ネットワーク」(松本市)の「けん玉検定」も受けられる。
白馬村や松本市などにはコミュニティーや練習の場があるが、身近にもあるといいと考え、(玉を大皿と中皿に交互に乗せる)「『もしかめ』以上のいろんな技を含め、けん玉の楽しい部分を広めたい」と、親子二人が代表となって立ち上げた。
怜也さんの母校、大町東小の児童をはじめ、市外や県外からも参加がある。今夏の「全日本少年少女けん玉道選手権大会」に出場した、同小6年の飯森小春さん(11)は「家に近くて通いやすい。すごい先輩がいるから自分も頑張ろうと思える」。怜也さんも「自分がやっていることを言葉にして教えると、改めて理解、確認ができる」と、自身の成長につなげている。
W杯優勝目指し技のレベル向上
怜也さんは小学5年生の時、学級担任だった小山正博教諭(48)の影響でけん玉にのめり込んだ。けん玉発祥の地とされる広島県廿日市市で開かれる「ウッドワンけん玉ワールドカップ」(実行委員会主催)では参戦4回目の今年、昨年の9位から躍進して4位に食い込んだ。今大会は17の国と地域から876人(オンライン含む)のエントリーがあった。
決勝は3分間で100の規定技から自身が選んだ技に順番に挑戦し、得点を競う。レベル10(最高は12)の大技「ふりけん~クラウドバウンスけん」を決めるなど、「緊張したが、自分のやりたい技が全てできた」。現在は、広島市のけん玉チーム「DreamKendama」所属のプロプレーヤーとして各種大会やイベントに参加。12月に、フリースタイル形式の世界選手権(東京)にも参戦予定だ。
伸雄さんは1年半ほど前からけん玉を始め、指導員や検定員の資格を取得。地区の健康づくり推進員を務め、けん玉を使ったフレイル予防の講座も開いた。「技ができた喜びは子どもも大人も関係ない。喜んでくれる仲間の存在も大きい」と、コミュニティーの意義を語る。
W杯優勝を目標に掲げる怜也さん。「けん玉はコミュニケーションツールとして使えるのが魅力」といい、自身のレベル向上と、輪の広がりを願う。
参加申し込み、問い合わせは=インスタグラム=から。