「松本国宝の架け橋プロジェクト」城北に交流拠点「タカノバ」オープン

いつ来ても違った面白さ提供

松本城の北、松本市の鷹匠町・北馬場エリア。給油所跡地を利用した空間に16日、市民や観光客の交流拠点「タカノバ」(開智1)が誕生した。
木曽ヒノキ香るウッドデッキを、飲食や土産物など3棟のコンテナハウスが囲む造り。「いつ来ても、違って面白い」を合言葉に、日替わりの飲食店や随時のイベント開催でにぎわいを創出する。
初日は和太鼓、新体操、地域が題材のクイズ大会にトーク、縁日ーと企画も盛りだくさん。通りを歩く観光客らも巻き込み、拍手や笑顔が行き交った。
「松本国宝の架け橋プロジェクト」と名付けた、市民主導の実験的なまちづくりの試み。イベントリーダーの小松誠さん(蟻ケ崎4)ら、住民の「場づくり」に懸ける思いを聞いた。

多くの人の力に喜びとやりがい

16日、松本市開智1の「タカノバ」は、開業のお祭り色に染まった。三つあるコンテナハウスの一つ、事務所兼交流拠点の「タカノバBASE(ベース)」はこの日、ミニFM局に変身。小松誠さんは舞台の実況中継や店紹介など、軽快な声で会場の盛り上げに貢献した。「いろいろな問題をクリアし、多くの人が関わってくれ、チームの力できょうの日を迎えられた」と、晴れの日の喜びをかみしめた。

「誰かに語りたくなる暮らし」の実現をコンセプトに、市などが進める「松本城三の丸エリアビジョン」。城周辺を10の「界隈(かいわい)」に分け、住民主導でまちづくりの計画を立案、来年度までの2年間で実行・検証する。今年実現した六つの構想のうち、唯一の常設施設が、ここタカノバだ。
松本城と旧開智学校という二つの国宝を結ぶエリアだが、商店は少なく、高齢化が進み、住民が気軽に集う場所がない地区でもあった。設計事務所を営む荒井洋さん(66、開智1)を代表に、「暮らす人が集まり、さらに訪れる人と緩やかに共生する」ビジョンを掲げたのが、「松本国宝の架け橋プロジェクト」だ。昨秋、スタンド跡地の無償提供の話を受け、「場」の実現が一気に具体化した。
ハード整備は、荒井さんの声かけで理念に共感した地元企業約10社が、木材提供や土木工事などで強力にバックアップ。ソフト面はイベントリーダーの小松さんを先頭に、運営計画や催しの準備を進めてきた。
若い頃、バックパッカーとして世界中を歩き、青年海外協力隊の経験もある小松さん。途上国での学校建設にも参加、大学院で持続可能な社会づくりについて学んだ。これらの経験から「住民やさまざまな人がつながる開かれた場の重要性や、住民が必要な場を一からつくり上げる過程の面白さを感じてきた」とプロジェクトに参加した。
スタッフの大半は仕事を持つ市民や学生。一堂に会しての活動は難しく、意思疎通や情報共有でも苦労した。それだけに開業初日は「喜びと、これから盛り上げていくやりがいを感じた」という。
タカノバの名には、タカ=「多」くの「価」値と「可」能性、訪れた人同士が「化」学反応を起こす場にーとの願いを込めた。立ち寄った関哲郎さん(44、城西)、明子さん(43)夫妻は「来るたびに違う店やイベントというのが面白い。また遊びに来たい」と期待した。
「今後は小さなマルシェ開催やコンサートなどの発表の場にもなれば」と小松さん。運営資金など課題はあるが、多くの人が自由に集い語らう国宝の間のオアシスとすべく、小松さんの頭は次の構想へと向かっている。
情報は、インスタグラム、ウェブサイト(「松本国宝の架け橋プロジェクト」で検索)。