
日本一周中に住みたい場所を探し移住、手に職をつけて自営業を―という二つの夢をかなえた人がいる。安曇野市穂高の澤村拓実さん(25)だ。
日本一周後は、社会人向けの学校へ通い、コーヒーやアルコールについて勉強。昼はカフェ、夜はバーで働き、技術を磨いた。昨年9月に自身のブランド「澤村珈琲(コーヒー)」を立ち上げ、インターネットなどで販売を始めた。
今年5月、諏訪市のイベントへの出店がきっかけで、神奈川県から安曇野へ移住を決め、8月に引っ越し。現在はパン店で間借り営業する。ずっと住みたかった安曇野で、こだわりのコーヒーやコーヒー飲料を提供している。
安曇野市穂高のパン工房「Kuuh(くう)」。ドアを開けると、コーヒーのいい香りがする。同店が大阪と安曇野の2拠点営業になり、空いてる日を利用してオープンする「澤村珈琲」だ。経営するのは、代表の澤村拓実さん。8月に神奈川県から移住したばかりだ。
5年前、住みたい場所を探そうと友人と車で日本一周し、長野県と大分県を候補に絞った。以前からコーヒーやアルコールに関わる仕事をし、「ドリンクを作る仕事は楽しい」と感じていた澤村さん。日本一周後は社会人向けのスクールに通い、腕を磨いた。
昼はカフェで、夜はバーでと、昼夜を問わず働いた。「直接お客さまと対応し、反応が見られる。距離感が近く、やりがいがあった」と振り返る。
自分のブランドを持とうと昨年9月、「澤村珈琲」を設立。ネットショップで自家焙煎(ばいせん)の豆の販売を始めた。一つの夢へのスタートを切り、「移住先をどこにするか」を真剣に考え始めた。「山に囲まれた暮らしがしたい。ビルに圧迫されるより、山に守られている感覚がいい。大分県の湯布院は、観光地過ぎて暮らすのが難しいのでは」と、移住先を長野県に決めた。休みを利用して県内のイベントに出張出店するようになった。
安曇野市のイベントに出店した際、地元の飲食店オーナーと知り合い、相談に乗ってもらうように。諏訪市のイベントでは、隣に出店した人が、「Kuuh」のオーナーとつなげてくれた。安曇野では月2~3日しか営業しないため、空いている時を使って間借り営業をすることにした。
浅いりを基本に、仕入れの難しいコーヒー豆である「ボリビアナチュラル」「ボリビアゲイシャ」の他、県内では珍しいロブスタ種、「ベトナムファインロブスタ」を扱う。豆を売るだけでなく、「珈琲檸檬(れもん)ソーダ」「クロワッサンと珈琲」など、店内で飲食もできる。「林檎(りんご)の生蜂蜜ラテ」といった信州らしさを表現したメニューもある。
バーテンダーではなく、コーヒーを扱うことを一生の仕事に選んだのは?という問いに「コーヒーの知識はバーの仕事に生きることはあるが、逆はあまりない。焙煎(ばいせん)はすごく難しく複雑。1、2秒の差で味が変わるなど奥が深い」と澤村さん。コーヒーをしっかり評価できることを証明する国際資格、Qグレーダーを持つ。「オリジナルコーヒーカクテルの大会『ジャパンコーヒーイングッドスピリッツチャンピオンシップ』で優勝したい」と意気込む。「もっともっと澤村珈琲のブランドを大きくしたい」。大好きな安曇野で、大好きなコーヒーの夢を広げていく。
午前8時~午後4時。不定休。TEL080・5984・5168。インスタグラムはこちら。