
LGBTQ+(性的少数者)を含むオールセクシュアリティー対応の結婚相談所を運営する「グッドライフ信州 笑結(えむ)」(松本市庄内1)は、LGBTQ+を正しく知ってもらい、誰もが自分らしく生きていける社会をつくりたいと、当事者と一緒に動画の配信を始めた。また、性的少数者が安心して過ごせる居場所づくりの準備も進めている。
笑結は、相続やライフプランニングなどの相談事業を行っているグッドライフ信州の婚活事業部として、今年から本格的に始動した。
同事業部長で日本LGBTサポート協会認定講師の倉田由美さんは、LGBTQ+の人たちが直面している現状について、「差別やいじめに遭い、仕事を得ることも難しい。パートナーと一緒になっても、現在の制度では親族として認められず、みとりや相続もできない」と説明する。
笑結のサポートを受けるゲイの通称Pico(ピコ)さん(49、松本市)は「日本でLGBTQの割合は約1割といわれ、決して少数ではない。女性同士、男性同士、手をつないで街を歩きたいのに世間の目があるからできない、一緒に住む部屋を借りられないなど、動きにくいことが日々多々起こっている」と切実な思いを語る。
こうした厳しい現状を変えるため、まずは正しく理解してもらおうと、ユーチューブでの動画配信という形で発信することにした。当事者の思いや、LGBTを理解・支援する人「アライ」ができることなどについて一緒に話し合う様子を撮影し、伝えていく。
グッドライフ信州の代表理事、諸隈元さん(59)は「LGBTQの中にもいろいろな形がある。どういう人たちなのか正しく知ってもらった上で、支援の気持ちを示してくれるアライが増えれば」と期待する。
トランスジェンダー女性の舞佳(まいか)さん(中信地区在住)は「自分らしく働きたいけれど、それを理由に就職面接で落とされるなど、生きたい性で生きることができない。動画配信を通して偏見なく、正しく理解してもらい、身近にいるんだよと知ってほしい」と願う。
動画配信を見ても、当事者とアライが実際に集まって意見交換する場が身近にないのが現状だ。笑結では子どもから大人まで誰でも出入りが自由で、当事者を温かく受け入れる安全なコミュニティースペースをつくろうと話し合いを進めている。
「抱えている思いを打ち明けられない当事者がほとんど。安心して話せる場をつくることで生の声をもっと聞き、つらい思いをする人が1人でも少なくなっていってほしい」と倉田さん。
舞佳さんは「LGBTQ+、障がい者などの枠にはめず、同じ人と人のつながりで、気軽にコミュニケーションが取れる環境をつくりたい」と願い、Picoさんは「最初は興味本位でアクセスしてもらっていい。実際に話してみてどういう生活をしているか、どんなことに困っているかなど、伝えていくことによって理解が広がっていけば」と先を見据える。
諸隈さんは「多様性を認め合う世の中。今は性的少数者とくくられていても、正しい理解が進めばその言葉自体がなくなり、普通になる」と力を込める。
Picoさんは「ゆくゆくはレインボープライド(パレード)を松本でやりたい。理解してもらうために一つ一つ実現していきたい」。舞佳さんは「一度きりの人生を自分らしく生きることが大切だと思う。配信をしたり、パートナー探しをしたりしながら、悩んでいる人の相談にも乗っていきたい」と前を向く。
ユーチューブは「HAPPYプライド信州」。笑結の詳細はTEL0263・87・7178かこちらから。
【LGBTQ+】
女性同性愛者のレズビアン(L)、男性同性愛者のゲイ(G)、両性愛者のバイセクシュアル(B)、生まれながらの性別と自認する性別が異なるトランスジェンダー(T)、性自認や性的指向が特定の枠に属さない人や分からないクエスチョニング(Q)の頭文字と、+(それらに当てはまらない多様な性)を組み合わせた言葉。