南木曽町読書の鈴木為良(ためよし)さん(75)は、南(みなみ)木曽学童野球クラブの代表だ。地域の子どもたちに野球を教え続けて45年。現在も毎週、指導するほか、グラウンド整備にも汗を流す。「野球命」という日々を過ごしている。
野球の良さ伝えたい
14日の午前中、雑草もなく整備された渡島総合グラウンド(同町吾妻)で11人の小学生が練習に励んでいた。鈴木さんは、シートノックをしたり、ベンチから子どもたちにアドバイスをしたり。
毎週土、日曜の練習に参加。平日は自主的にグラウンド整備に出向く。4年前まで同クラブの監督を務め、OBには甲子園出場選手も。監督として指導した最後の子どもたちは現在高校1年生。中信地区や愛知県の「野球強豪校」に進んだ教え子もおり、今後の活躍を楽しみにしている。
高校時代、軟式野球部員だった鈴木さんは卒業後、南木曽町役場に勤務し、早起き野球を始めた。その頃の町内には「野球熱」があり、1977年には田立、妻籠、蘭、読書の4小学校ごとにクラブチームが結成された。
鈴木さんは読書小クラブの監督に。強いチームにするために「観察力」と「洞察力」の鍛錬に力を入れて熱血指導。試合中の凡ミスは徹底的に叱る一方、練習後にはクリームソーダを食べさせるなど、子どもたちに愛情を注いだ。
その後、少子化により97年には妻籠小と読書小が統合、2007年には田立小と蘭小も統合され、町内の野球チームは南木曽学童野球クラブ一つだけになった。17年から大桑村の児童も加入し、現在のクラブ員は15人だ。
長年にわたる指導期間で、子どもも保護者も変化。「昔は厳しく指導したが、今は“エンジョイベースボール”でいい。野球を頑張ったことがその子の人生のプラスになるはずだから」と鈴木さん。指導方法は変われど、野球を通じて子どもの成長を願う気持ちに変わりはない。ただ4年前、ノックでキャッチャーフライが上がらなくなってきた時、監督としての“引き際”を感じ退いた。
鈴木さんの教え子、桜井優太さん(33、吾妻)は、高校時代まで野球を続けた。今年から自身の長男、陸翔君(南木曽小1年)が同クラブに入部した。
「怖い監督だったけれど野球の楽しさを教えてくれた。息子にも仲間とのつながりや礼儀をここで学んでほしい」と期待する。
79年に始まった町少年野球大会は今年、45回目に。当初、木曽郡内にあった16チームは現在4チームに減少。大会には阿智村や岐阜県中津川市のチームも参加する。
鈴木さんは「(野球は)打って投げて走っての総合力が必要。ピンチやチャンス、逆転劇など一つのゲームでさまざまなことが起きるのが好き。これからも野球の良さを理解してもらえるような指導をしていきたい」。日焼けした笑顔を輝かせながらそう語った。