安曇野へ移住 オーガニック菓子喫茶開店

心と体に優しく 「かまどのかみさま」安曇野市

グルテンが少ない小麦、牧草だけで育った牛の乳のバター、無農薬デーツ(ナツメヤシの実)など、素材にこだわったオーガニック(有機栽培)菓子喫茶が安曇野市三郷小倉に開店した。埼玉県からIターンした押川豊さん(53)、海香(みか)さん(37)夫妻の「かまどのかみさま」だ。
安曇野に旅行に来て風を感じ「鳥肌が立った」と海香さん。「ここに住みたい」と直感したという。「仕事を辞めてまで…」という豊さんも、強い思いに負け移住を決意した。
「自分で考え選ぶことが命を守る」と、食材や生活用品にこだわってきた海香さん。そのこだわりを小学校から大好きだったお菓子作りに生かし、仕事にした。そこには、豊さんの入れるコーヒーと家族の笑顔が寄り添う。

埼玉から安曇野家族で移住して

「安曇野市に移住したい。ここがいい」。2年前、旅行で同地を訪れた際、押川海香さんが頭でなく心で、体で感じた感覚だ。埼玉県川口市に自宅を購入、夫の豊さんは責任ある仕事を任され、生活基盤はしっかりしていた。それをなくしていいのか。豊さんは「何言ってるの?」という思いだった。
安曇野の空気、水、自然など、移住したい理由はさまざまあるが、「一番は豊さんが幸せそうでなかったこと」と海香さん。とても優しい人だが、仕事の重圧からか「子どもに当たることもあった」と振り返る。
海香さんは2019年から川口市で「お菓子屋さんマルシェ」をスタート。コロナ禍でオンライン販売に移行、販路が全国に広がった。「店とオンライン、2本柱なら生活できるのではないか。今まで頑張ってもらった分、私が食べさせてあげる」という気持ちもあった。思いを知った豊さんは、ハンドドリップでコーヒーを入れていたこともあり、「コーヒーおじさんになってもいい」。22年10月、安曇野市に移住した。

菓子とコーヒー夫婦で力合わせ

海香さんは子どもの頃から菓子作りが大好き。短大の製菓学科を卒業し、パティシエとして働いたたこともある。「人に笑顔になってもらうのが好き。それが私にとってたまたまお菓子だった」と話す。
子どもが生まれる前、添加物について疑問を持った。いろいろ調べる中、自分で考え選ぶことが、命を守ることにつながると気づき、食材、シャンプー、洗剤など生活全般を見直した。それが今につながる。
オーガニック菓子喫茶「かまどのかみさま」のコンセプトは「世界でただ一人大切なあなたに贈るお菓子」だ。グルテンが少ない古代スペルト小麦は手に入りにくいため、自宅の畑で有機栽培することに。甘味には有機てんさい糖、減農薬リンゴ、有機メープルシロップなどを使う。
そんなこだわりで作られた菓子は、どれも優しく、口にすると心が癒やされる。喫茶でコーヒーと共に味わうと、ふっと気持ちが軽くなる。中米・古代マヤから伝わるとされるマヤナッツを使った「マヤナッツクッキー」など、クッキーは1枚200円から。10月には無添加食材の「朝ごはん」も始めた。
喫茶や自宅、畑の他、別棟、倉庫のある場所を「ユタカナル」と名付けた。「豊かさへの原点回帰にしたい」という思いがあふれる。倉庫での木工クラフトのワークショップ開催なども視野に入れる。定休日は、カレー店などが間借り営業するなど、いろいろな人が集い始めた。
オーガニック食材を使って人の心身を癒やすだけでなく、「有機栽培をすることで地球を大切したい。安曇野をオーガニックの町に」と海香さん。そんな押川さん一家を、地元の人が温かく見守る。

【かまどのかみさま】

テイクアウトは水曜~土曜午前9時~午後5時、喫茶は木曜~土曜午前9時~午後4時。

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