デイサービス職員の長尾さん 手作りの置物展示

フキノトウ、ツクシ、シロツメクサ、カーネーション、こいのぼり、アジサイ、風鈴、かかし、カキ…。塩尻市広丘吉田のデイサービスセンター田川の郷のデイルームでは、季節感あふれるかわいらしい置物が、利用者が囲むテーブルを彩っている。
制作しているのは、同所介護員の長尾恵美子さん(51、松本市両島)。「ここに来た時に少しでも季節を感じたり、昔を懐かしんだりしてもらい、会話が広がるきっかけにもなれば」と話す。
月に1度のペースで「新作」を作り続けている長尾さん。「作ることも好きだし、喜んでもらえれば私自身が何よりうれしいので、作らせていただいている」という思いが、制作の原動力になっている。

施設に来る楽しみの一つに

6年前に転職し、デイサービスセンター田川の郷に勤め始めた長尾恵美子さん。もともと小物などを手作りすることが好きで、趣味で粘土細工を作っていた。昨年春から「利用者さんが楽しめる物を作ってテーブルに置きたい」と申し出て、取り組み始めた。
「外に出る機会が少ない人も多いので、テーブルで季節を感じてもらえれば」。題材は野に生えている四季折々の草花が中心だ。「(何をどのように表現するかという)構想は1カ月くらいかかるけれど、それが決まると2日くらいで作れる」と長尾さん。
普段から日常生活にある物を「これは何に見えるか」と考えたり、動画サイトを参考にしたりして、アイデアを膨らませる。100円ショップで売っているグッズや廃材を使い、各テーブルに置けるよう、デイルーム内のテーブル数と同じ8個ずつ制作。触っても危なくないようにと針金の先を曲げたり、滑らないように瓶に毛糸を巻いたり。倒しても壊れないように、部品をボンドでコーティングするなど、安全には気を配る。
また、クローバーの中に一つだけ四つ葉を入れたり、てるてる坊主をつるしたワイヤをカタツムリの形にしたりと、「探したり気付いたりして楽しんでほしい」と遊び心も織り交ぜる。「別の日に来た時に、前回との違いも楽しんでほしい」と、8個それぞれの表情や形を少しずつ変えるなど、工夫も凝らす。
利用者からは「本物みたい」と声が上がったり、探し出した四つ葉に喜んだり。「フキノトウはどうやって食べた」など、話題が広がるきっかけにもなっている。同所を訪れるボランティアからも「何が置かれているか楽しみ」という声が聞かれるという。
「作ることが好きなので、まずは作っていて自分自身が幸せ。イメージ通りにできるのも楽しい」と長尾さん。同所の塩原学所長(44)は「自主的にやっていていただき、とてもありがたい。施設を飾ったり、社協のホームページに載せてPRさせてもらったりしている」と感謝するが、長尾さんは「それに甘えさせてもらっている」と笑う。
「自分の趣味や特技で人が喜んでくれることに、手応えを感じる。これからも、見た人が自然に笑顔になれるような物を作って、施設に来る楽しみの一つにしてもらえたらうれしい」