
村内外の人が出会う場に
「麻績村にこういう店ができることは衝撃に近い」。柔らかい光が照らすカウンターで、村内に住む男性(68)はほほ笑んだ。この日傾けたのはコーヒーカップだが、目の前にはワイングラスが下がり、ウイスキーや日本酒の瓶も並ぶ。店主の池田由美子さんが作るカクテルや、サーバーから注ぐクラフトビールを味わうこともできる。「しかも、いいライブをやる」。ジャズ好きという男性は、さらに顔をほころばせた。月に1回のペースで、さまざまなジャンルの生演奏が聴ける。そのステージは1年前はそば店の小上がりだった。池田さんが建物をリフォームし、今年4月、「ヒジリハイブ」としてオープン。村で今までにない交流の結節点に生まれ変わった。
聖高原駅の近くお酒と生演奏を
JR聖高原駅から徒歩1、2分の「TheHijiriHiveBeer&Cafe(ザ・ヒジリハイブビア&カフェ)」(麻績村麻)。池田由美子さんが「新しいビジネスを始めたい」と作った店だ。
池田さんは千曲市出身。横浜市で仕事をしていた10年ほど前、踊りの稽古で安曇野市に通い始めた。里山の生活に触れ、自分もと思うように。住まいを探し、2014年、麻績村に移り住んだ。
ネットショップを営んだり、ヨガや英語を教えたりしていた1年前、ふと「違うことをしたい」と思った。
それまでに、村内のゲストハウスに海外や関東地方からさまざまな人が来ることに気づいていた。村民と交わることなく帰ることも。
池田さんにはバーテンダーの経験があった。神奈川県横須賀市の米兵らが来る店で6年ほど。その仕事が好きだったのを思い出した。「この辺にああいう店があったらいいんじゃないか」
物件探しが始まった。主な条件は二つ。一つはライブ演奏ができること。聴くのが好きだし、自分でもピアノを弾く。
もう一つは駅に近いこと。村外に住む人が飲酒をしても帰れるからだ。「麻績は松本と長野の中間。通過点でしかない人に途中下車してもらいたい」と思った。
紹介されたのが、長く空いていたそば店だった。訪れると、改装のイメージが湧いた。ステージにぴったりだと思った小上がりは、赤いカーペットをめくると、おあつらえ向きに板張りが現れた。
客同士つながりイベントも実現
オープン最初の出演者は、建物を改築してくれた大工がメンバーのバンドだった。その後、村内のリンゴ農家のミュージシャンに声をかけたり、東京からシンガーを呼んだり。プロアマ問わず、ジャンルもさまざま。池田さんが直接交渉して来てもらう。
売りにするクラフトビールも自分で選ぶ。
店名のハイブとは、英語でミツバチの巣箱という意味。村内外の人が出入りし、出会う場所にしたいと名付けた。実際、客同士がつながって、幾つかイベントが実現した。
「いろんな人が来てくれて面白い。店の評判がじわじわと広がっていけばいい」
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営業は水~土曜の午前11時半~午後8時半。TEL0263・87・3286。=インスタグラム=でも発信中。
次回のライブは11日、筑北村出身の竹川也清さんがギターの弾き語りを聴かせる。チャージ千円(別に1ドリンク注文)。