
古い建物生かし落ち着く店内
松本市大手3の国宝松本城や市役所に近い長屋の一角に11月1日、カフェ「aLcoffee&bake」がオープンした。田中佑樹さん(29)、風月さん(28)夫妻が大正期の建物を改修し、念願の店を開いた。「地域の人とコミュニケーションを楽しみながら、縁をつなぐ場所にしたい」と張り切っている。
味や食器にこだわりも
店は古い建物の良さを残してリノベーション。コンクリート打ちっ放しの床や梁、階段、トイレの土壁などはそのままにし、夫妻も壁を塗るなど作業に加わった。古材で作ったテーブルや椅子を置き、店の入り口の扉やキッチンとの仕切り窓は古道具店で調達するなど、古い物がなじみ落ち着いた雰囲気だ。
「自家焙煎スペシャルティコーヒー」を提供し、豆は浅煎りから深煎りまで数種類を扱う。他のドリンクも中川村産のメイヤーレモン(時季による)で作るレモネードや天龍村産の緑茶など、県内を中心に生産者の顔が見えるものにこだわった。
レモンケーキやプリンなどは風月さんの手作り。エスプレッソを使ったティラミスは、シェフをしている父親からレシピを受け継いだ自慢の味だ。食器は「クラフトフェアまつもと」で出会った地元作家の作。先が細いコーヒーカップは、香りをより感じられる特注品だ。
同業者に習い夢を実現
佑樹さんは同市出身。大学を卒業し、働いてみたかったコーヒーチェーン店で2年間アルバイトをした。その後、松本市役所に就職してからも、職場にハンドドリップの道具を持ち込み、休憩時間に豆をひいて同僚に振る舞ったほどのコーヒー好きだ。
転機は、2年前にオープンした同市清水1のカフェ「koloro coffee」との出合い。常連になり、経営者の岡島直哉さん、夢喜乃さん夫妻と話す中で、「店を開きたい」という以前から抱いていた夢が現実味を帯びた。決心した佑樹さんは市役所を辞め、岡島さんの下で修業し、開業のサポートも受けた。
風月さんは木曽町出身。父親の影響もあって料理や菓子作りに興味を持ち、高校卒業後にカフェやレストランなどで働き、イタリア留学もした。「いつかカフェを開きたい」という思いが、佑樹さんと一致した。
店名の「aL」は、イタリア語で木を意味する「アルベロ」から。「大きな木のように地域に根差し、みんなのよりどころになれば」と夫妻。
11月は午前8時~午後5時で水、木曜休み。営業時間の変更や12月以降の予定、連絡先などは店のインスタグラムから。