松本で体験する日本の伝統文化 3団体協力し観光客向けプラン

華やかな着物を身にまとい、人力車に乗って古き良き街並みを巡る、楽しそうな外国人女性。松本市の3団体が手を組み、11月28日から始める観光客向け体験プランの、無料試行体験の一場面だ。10日から5日間行われ、15組30人が参加した。
三味線専門店「菊岡まつ乃」(中央3、山梨県本店)、レンタル着物の「花こみち」(大手3)、市内を人力車で運行する「松本人力車の会」(大手4)が共同で企画。「松本で知る日本」をテーマに、体験型プランを考案した。
日本の伝統衣装の着物を着ながら市内を巡り、三味線の演奏体験を通して、松本の歴史、日本の伝統や文化に触れる―。関係者は「松本の観光を盛り上げる要素の一つになれば」と期待する。

今月行われた観光客向け体験プランの無料試行体験には、5日間で米国や中国、ベトナムなど、日本を含む13カ国の交換留学生や学生、地域住民が参加。友人同士やカップルなど、20代から70代までのさまざまな世代が楽しんだ。
レンタル着物の「花こみち」で好みの着物を選び、着付けとヘアセットをしてもらう。迎えに来た人力車で松本市内を着物姿で回り、三味線専門店「菊岡まつ乃松本支店」で演奏体験ができる。3時間どっぷりと日本の伝統文化に浸れるプランだ。
11日は、交換留学生として信州大に通うトルクメニスタン人のオグル・ゴゼルさん(21)と、友人のフランス人ヴァランマルゴ・マリアンさん(21)が参加した。
桜と菊柄の着物をまとったゴゼルさんは「日本の昔のお姫様気分」と笑顔。人力車のコースはこのプランのオリジナルで、松本城の後、縄手通りか中町通りを選択できる。松本城をバックに写真撮影をしたり、車夫の小泉容一さん(56)から松本城や城下町についてユーモアあふれる解説を聞いたりしながら、松本の歴史を楽しく学んでいた。
小泉さんは「時代ごとに歴史(の遺物)が残っている。体験プランを通じて時の流れを感じてほしい」。三味線体験では、講師の指導のもと真剣に練習し「さくらさくら」の一節をマスター。講師の三味線生演奏もあった。
マリアンさんは「日本の魅力が詰まった初めての体験ばかりで、とても楽しかった。良い記念になる」と満足そうだった。
菊岡まつ乃代表の松野洋介さん(44)は、昨年から三味線を広く知ってもらう目的でスクールを開始。地域の人たちが通っている。活動の中で、興味を持ってくれる外国人はいても、なかなか中に入ってくれないもどかしさを感じていた。「松本市は外国人観光客は多いが、外国人向けのコンテンツが少ない」
「自然と伝統が融合する魅力ある松本で、より多くの人に楽しんでもらいたい」と、花こみちと松本人力車の会に声をかけ、体験しながら魅力を伝える同プランを考案。英語のガイドや翻訳動画などを取り入れ、観光庁の補助金を受ける。
松野さんは「体験した皆さんの表情を見て自信を持てた。単体ではなくセットだからこその付加価値がある。日本人も楽しめると思う」。花こみち代表の磐佐健太郎さん(44)は「市内の事業者と手を取り合えば、魅力をもっと伝えられる。横のつながりを大切にして、松本全体の観光を盛り上げられたら」と意気込む。
料金は未定だが、1人3万円前後となる見通しだ。問い合わせは菊岡まつ乃松本支店TEL0263・34・4433