94歳の現役建築家 降幡廣信さん 古民家再生に情熱

壊したら、材料、技術は消えてしまう。生かす方法はないか─。そんな思いで古民家再生に取り組むのは、建築家で、降幡建築設計事務所(本社・松本市島立)の会長、降幡廣信さん(安曇野市三郷温)だ。94歳になった今も現役で、その情熱はまだまだ熱い。

住む人に幸せを提供

寒い、使いにくい、雨漏りがするなど、不便な古い建物を、今の生活と調和させる。1984(昭和59)年、松本市神田の築約300年という家を手がけたのが、「古民家再生第1号」と降幡さん。方法を確立し、90年に日本建築学会賞を受賞した。これまで350軒ほどを生まれ変わらせ、「古民家再生の父」「古民家再生の第一人者」と呼ばれる。
青山学院専門学校建築科、関東学院大建築学科を卒業。61年、三郷村温(現・安曇野市三郷温)の家業、山共建設を継いだ。70歳で引退を考えていたが、建築史家で東京大名誉教授の村松貞次郎さんと出会い、考えを変えた。「日本の建築の再生という扉を開いた。93歳まで仕事をした建築家の村野藤吾さんより長く生き、古民家再生を守る責任がある|と言われた」。94歳まで仕事をすることが目標になった。
地元の木を使い、全て手作りされた古民家は、「地方の証明書」と降幡さん。唯一無二の存在で、だからこそ残したい。住む人にとっても思い出がある家を壊すのは忍びない。「新しく命を吹き込むと、『夢のようです』と涙を流しながらに喜んでもらえる。古民家再生は大変なことも多いが、それが原動力にもなっている」
27歳で大病をし、生きる希望をなくした。先が見えない中、教会に通い、新しい光を見いだした。「新生した」と実感。その経験も、古民家を再生させる核になっている。
94歳のハードルは越えた。次は101歳まで「古民家を再生し、住む人に幸せを提供しよう」という気持ちを持続したいという。