毎朝のように園や学校に行きたがらない「行き渋り」。登園・登校してしまえば、先生からは「普通に元気にやっていますよ」と言われるものの、送り出すまでが毎朝とても大変ということがあります。
園や学校に行けば普通にやっているといわれると「親に甘えているだけ」、“朝だけ”“家だけ”の問題と見られがちですが、こうしたお子さんの中には、集団生活で過剰適応してストレスを感じやすいタイプもいます。
過剰適応というのは、相手やその環境で求められている行動や振る舞いに過剰に無理をして合わせてしまっている状態で、一見問題がないように見えますが、過剰適応が続くと、ストレス過多でさまざまな不具合が起きます。無理して求められているように振る舞うため、その場所に向かう家で、相当に気合を入れないと“戦場”まで行くことができず、気合が入るまでぐずぐずして行きたがらないというわけです。
外来に来る不登校になったお子さんのこれまでをお聞きすると、園・学校生活の複数の年度で、数カ月以上の行き渋りが繰り返されたというエピソードがよくあります。最後の一撃のきっかけがあって不登校になった過去には、それまでもずっと集団生活での苦しさがあったのだろうと推察されることが多々あるのです。
もちろん、行き渋りをしているお子さんが全員不登校になるというわけではないでしょう。それでも行き渋りがあるということは、園や学校で苦しさを感じている可能性を広く考えて、家だけの問題と矮小(わいしょう)化しない。家庭と園や学校で連携・協力して、行きやすくなるように工夫していく視点を持つことが、長い目で見て大切だと考えています。
【なないろキッズ】 #90 行き渋り広く連携を
- 2023/11/30
- 小児科医・新美妙美のなないろキッズ