浜染工房と皮革業者の技術融合 型染め施した鹿革製品誕生

ほとんど活用されてこなかった、有害鳥獣として駆除された鹿の皮。藍染めの浜染工房(松本市庄内2)が、県内の革製品製造販売会社と協力し藍の型染めによる鹿革製品作りに取り組んでいる。
皮革製品を扱う業者らが連携し、鹿革などの有効活用を目指す「信州エシカルプロジェクト」の一環。環境や社会問題に配慮した商品の開発・消費と地元の伝統技術の可能性を広げる試みだ。
工房代表の浜完治さん(74)は全国に数人しかいない藍の型染め職人。3年前から「新しい藍染めを」と革に着目、難易度の高い素材に挑戦してきた。
当初はうまくいかず諦めかけたが、必然の出会いでプロジェクトの一員に。工房近くの「逢初(あいぞめ)橋」にちなんだ「逢初レザー」が生まれた。

難しい鹿革の染めに挑戦
ジビエレザーの有効活用に一歩

繊細な模様が連続して続く型染めの長財布、藍の濃淡により不思議な模様が広がる絞り染めのバッグや小銭入れ…。「逢初レザー」は、鹿革の柔らかな手触りと職人による緻密な技術の融合が特長だ。
革を手に取り「難しいけれど楽しい。もっと精度を上げていきたい」と浜完治さん。藍染め職人の道を歩んで半世紀以上になる。
3年ほど前、市内のジビエ(野生鳥獣肉)加工施設から依頼され、鹿革への藍染めに初挑戦。その厚さから染料のつぼに入れたり干したりする際にとても重いことや、一つの革を30回以上染めても色が出なかったり、型染めにむらが出てしまったりと苦戦した。
その後も取り組むが、失敗。諦めかけていた昨年、テレビ番組で千曲市の革製品製造販売会社「Groover Leather(グルーバーレザー)」代表の徳永直考さん(46)が、「信州エシカルプロジェクト」を発足させたことを知った。
プロジェクトに賛同し革の藍染めについて相談したいと思っていた矢先、偶然にも徳永さんから鹿革の藍染め製品を開発したいと声がかかった。徳永さんが発起人となり、浜さんと飯田市の革製品製造会社「メルセン」で「逢初レザー」を企画。難しいといわれる革の藍染めに挑戦することになった。
メルセンが藍染めしやすいよう革を薄めになめし、浜さんは革専用に藍の濃いかめを用意して、本格的に着手。革には個体差があって、布のように均一に染まらない課題はあるが、取り組みが軌道に乗り始めた。
染まった革はメルセンで仕上げをし、徳永さんの会社で仕立てる。「藍の型染めレザーは想像以上にきれいな仕上がりで、希少価値も高い。信州の魅力発信につながれば」と徳永さん。9月末に最初の製品が完成した。型染めの長財布や絞り染めのショルダーバッグ、スリッパなどだ。
県内のジビエレザーは、ほとんど使われず破棄されてきた。もともと鹿革は軽くて柔らかく、通気性にも優れた良さがある。浜さんは「鹿革の有効活用にも役に立てれば。3人のアイデアを持ち寄り、いろいろな製品を作っていきたい」と話す。
同プロジェクトはこのほか、千曲市の「更級花織工房」によるアンズ染めの製品なども展開。12月22~24日、アイシティ21(山形村)で開く「信州クラフトマンズフェア」で展示販売する。