やりがい感じ情熱傾け
「『ワインになるのかな』と、心配したほどなので、おいしく飲めれば上々の出来栄えです」。こううれしそうに話すのは、昨年7月に設立したワイナリー、ドメーヌ・ド・ユノハラ(松本市里山辺)の醸造主任、吉田健人さん(32)だ。ワイン造りは、降って湧いたような突然の仕事だったが、「やりがいがあります」と情熱を傾ける。
昨年12月に同ワイナリーで初めて仕上がった白ワインの「デラウェア・アンド・ナイアガラ2023」。原料のブドウは、生食用に使われることの多い、地元産のデラウェアとナイアガラ。8月にこの2種類のブドウを一緒に使う「混醸」という方式で約800キロ仕込んだ。
味わいは辛口で、スッキリ。「ナイアガラ独特の香りをデラウェアがうまく包み込んでいる。バランスはいいのでは」と、ホッとした表情を見せる。
千葉県出身。開成中学・高校を卒業後、米国の大学に進学。帰国後、都内で働いてから2018年に松本に移住。「接客や飲食関係の仕事に就きたかった」と、22年2月、同ワイナリーを運営することになる追分屋旅館(同)でアルバイトとして働くことにした。
同旅館の花岡秀敏社長から「ワイン造り」の話を持ちかけられたのはその直後。「物づくりは好きで、ワインの話も魅力的だったが、一からつくるとなると…」と、多少のちゅうちょはあったというが、6月には正社員となり、ワイン造りに携わることに。同時に山形村の大池(たいけ)ワイナリーでの研修が始まった。
現在、ユノハラの醸造責任者は、広島県のワイナリーの代表で研修の指導者でもある横町崇さんが務めるが、いずれは吉田さんがその重責を担う。
「ワインを造るということは、ブドウ農家になること」と、自覚した上で「いつかは、通をうならせるワインを造りたい」。
【沿革】
ドメーヌ・ド・ユノハラ 創業1963年の追分屋旅館が、昨年7月に設立。山辺地区内に79アールの畑を借り、昨年4月、10種類以上のワイン用のブドウ苗を植えた。
【吉田さんおすすめこの1本】
デラウェア・アンド・ナイアガラ2023(小売りはしておらず、追分屋旅館で食事をすると飲める)
【相性のいい食事】
白身魚の刺し身や塩を付けて食べる天ぷらなど
【連絡先】
追分屋旅館TEL0263・33・3378