ペットのための遠赤外線グッズ 安曇野「遠赤技研」が自社ブランド

ペットも家族 健康守りたい

遠赤外線を使った家庭用温熱治療器を製造する「遠赤技研」(安曇野市豊科)は自社ブランド「F’s WISH」を設立、今年から本格的に生産を始める。人間だけでなく、ペットのためのマットなども手がける。
これまでは、医療機器の家庭用温熱治療器のOEM(委託製造)、卸を行っていたが、取引先が減少し、売り上げが約半分に。注文だけでは先細りなってしまうための対応という。
社員の犬で試したところ、糖尿病の数値が安定した、コレステロール値が下がった─といった結果も出て、獣医や老犬ハウスも注目し始めた。
伊藤恭彦社長(56)は「ペットの遠赤外線グッズはまだまだ珍しい。今後も増やしたい」と意気込む。

自社ブランドで逆風はね返そう

遠赤技研は1988(昭和63)年、遠赤外線を活用した家庭用温熱治療器の製造卸会社として創業。接骨院や治療院、整形外科などに向けた商品を扱っていた医療機器メーカーなどに、製品を卸していたという。
ピーク時、取引先は5~6社あったが、現在は2社がメインに。年間1億円あった売り上げも、半分の5千万円ほどになった。新規開拓をと一般医療機器の認可を取って3、4年前、アパレルメーカーとコラボ。機能性サポーターの販売を始めたが、厚生労働省の認可基準見直しがあり、サポーターの販売ができなくなった。軌道に乗りかけた事業はストップした。
逆風をはね返そうと生き残る方法を模索。「注文を待っているだけではいけない」。2023年6月、自社ブランド設立のプロジェクトがスタートした。
「家族の健康を守りたい」。そんな思いを込めた製品を作ろうと、社長含め6人の社員全員で意見を出し合う中、さまざまな意見が出た。ブランドのキーワードは「願い」。英語で検索すると、Fで始まる言葉が多かった。「Family(家族)」「Fantastic(すばらしい)」「Fun(楽しむ)」「Felicity(至福)」─。昨年9月、複数の願いに応えるという意味を込め、ブランド「F’s WISH」を立ち上げた。

遠赤外線使用で高齢犬に変化も

遠赤外線は体を温め、血行を良くする効果があるという。「F’s WISH」には、遠赤外線を効果的に発生する鉱物を粒子状にし、繊維にプリントした素材・テラックスを使用した温熱器の他、アンダーウエア、ひざサポーターなどのラインアップ(3850~1万9800円)がある。
会議の中で、犬を飼う社員から「ペット用の製品を作ったら」というアイデアが出た。開発されたのはペット用のシーツ、ベッド型クッション、ベッドカバー(4180~1万3200円)。「人用と同じ素材を使っている」と伊藤恭彦社長。
15歳の高齢犬を飼う社員が、ベッドなどを使ってみると、血液検査で血糖値が下がる、コレステロールの数値が改善する、といった結果が出た。食欲も増し、かかりつけの獣医師も驚いたという。
現在、動物病院で試す、老犬ハウスでモニター実証実験を実施するなど、具体的なデータを集めている。人間向けのサポーターを扱う取引先も興味を持ったといい、ベッド型クッションを70枚卸した。
現在は、ペット用の洋服も試作中。サイズはS~Lだが、犬種による体格差があるため、オーダーも受け付ける。夏に向け、ペットの熱中症を防ぎ、快適に過ごせるようにと放熱する製品も開発中だ。今後もペット用グッズは増やしていく計画という。
糖尿病、腎臓機能の低下など、人間と同じ病気で苦しむ犬や猫がいる。「ペットも家族の一員。いつまでも元気でいてほしい」と伊藤社長。遠赤外線で心も体も温める。自社ブランドを掲げた挑戦は始まったばかりだ。TEL0263・73・2613