九九の学習でのつまずきがきっかけで、算数に苦手意識を強めたり、学校に行きづらくなったりしたというお子さんが、私の外来でも毎年のようにいらっしゃいます。
一般的に九九は「いんいちがいち、いんにがに…」と唱えて覚えていき、宿題でも何度も繰り返したり、〇の段を覚えたかなどさまざまなテストが行われるなど、2年生の学習の中で力を入れて取り組まれているようです。
例えば、聴覚的な記憶が苦手なお子さんの場合、唱えて覚えるやり方だとなかなか身につきません。また九九の一般的な唱え方では、「いち」と「しち」、「しち」と「し」が混同しやすかったり、「さぶろく」のような特別な読み方が「3×6」だとパッとつながらない方もいます。
視覚的な記憶の方が入りやすいお子さんの場合、色分けされた九九表を見て覚えるほうが覚えられるかもしれません。「しちしにじゅうはち」と唱えるより、「ななよんはにはち」と普段使っている数字の読み方で覚える方がいい人もいれば、「ナナよ、庭(28)」などと自分で考えた語呂合わせにイラストを描いたカードを作ることで覚えやすくなる人もいます。また、「4×7」と「7×4」は同じだと割り切れば、覚える量は半分に減ります。ユーチューブなどでいろいろな覚え方が紹介されています。お子さんに合ったやり方を早めに取り入れられるといいですね。
クラスで一人ずつ九九を唱えるテストをやって競わされる場合に、先のような通常と違う覚え方をしたことを否定されたり、競わされることでコンプレックスを感じ「自分は覚えるのが苦手だ」とつらくなったりしてしまうことも少なくありません。「〇秒以内に言えるように」と言われて焦ってパニックになってしまったことで九九自体がトラウマになり、算数の授業が受けられなくなったというお子さんもいます。
九九はぜひとも覚えてほしい内容だからこそ、プレッシャーがかかりやすく、能力差が可視化されてつらくなる子がいることを認識していただけたらと思います。
【なないろキッズ】 #94 九九の習得つらさも
- 2024/03/28
- 小児科医・新美妙美のなないろキッズ