熱した金属のペンで木に焦げ目を付けて絵や模様を描く「ウッドバーニング」。塩尻市北小野の浜田宗治さん(74)は、四半世紀ほど前、偶然この手法に出合ってからずっと独学で楽しみ、展覧会も開いた。細かい焦げ目を無数に連ねていくと、「無心になれる。それがいい」。
大阪府生まれ。高校時代に山登りで来た信州が気に入り、大人になって移住した。幾つかの職を経て、松本市アルプス公園(蟻ケ崎)の「小鳥と小動物の森」の飼育員になった。
世話する生き物たちの木彫りを趣味で作っていて、焼いて署名を入れるのに使っていたのが電熱ペンだ。ある日、ベニヤ板で手作りした扉に装飾がほしいと、試しに電熱ペンで焦げ目を付け始めた。「これで絵が描ける」と気付いた。定年を迎える頃のことだ。
インターネットで調べてウッドバーニングを知った。専用の高価な電熱ペンまであった。生まれつき色覚障害がある浜田さんは、焦げ色だけで表現する手法が「僕に合っていると思った」という。
道具を買い、好きな鳥をベニヤ板に描き始めた。「楽しくて、寝る間も惜しかった。最初は1本の線だったのが、だんだん形になっていく。そういうのが好きみたい。完成に近づくとうれしいんだ」。画題は、ネコなどの動物や人物、風景に広がっていった。
ウッドバーニングは、一度付けた焦げ目は消せない。大きなミスは修正できないので、くっきりとした線より、細い線を重ねた毛並みで輪郭を表現するような動物の方が向いているという。
「展覧会をやってみないか」と声がかかったのは定年して数年後。松本市のコミュニティー施設で開くと反響があり、その後、博物館などでも作品を披露してきた。
「買いたい」という人もいて、「売れるんだ」と驚いた。値付けも独自。時給千円で制作時間を掛けると、「だいたい1枚1万円くらい」という。
これまで千枚以上の作品を描いた。これからも気ままに制作活動を続けるという。ホームページに作品や連絡先を掲載している。