【なないろキッズ】 #95 合理的配慮-対話を

改正障害者差別解消法が今月から施行され、事業者による障がいのある人への「合理的配慮の提供」が義務化されました。合理的配慮とは、障がいのある人の社会的なバリアを取り除くため、事業者側の負担が重過ぎない範囲で必要な対応をすることです。
この件に関してSNS等では「障害者様のわがままにつきあいきれない」「個人経営の店にとっては無理難題を言われても負担でしかない」などといった恐れや心配の声も見られます。こうした意見を目にすると、発達障害の子どもの保護者としては「クレーマーに思われるのではないか」と委縮してしまうかもしれません。でも、こうした恐れや批判は、多数派の人が、少数派の人の苦労や苦悩を知らないから生じているのではないかなと思っています。
合理的配慮は、障壁を感じている側の申し出があった場合に、何が障壁となっているかについて事業者側と対話し、障壁を小さくするための合理的配慮について合意形成していく過程が重要とされています。必ずしも申し出通りに事業者側が全て従わなければいけないわけではありません。とはいえ「前例がない」「そこまでできない」などと話し合いもなく一方的に断ることは差別だとされます。
例えば最近コンビニのレジで、「温めてください」「袋いりません」などを指さしで意思表示できるマークが置かれるようになっています。これがあることで、聴覚障がいの方がこんな場面で不便をされていたんだなということに気づき、マークが設置されたことでスムーズに買い物ができるようになってよかったと思いました。このマークは聴覚障がい者だけでなく、吃音(きつおん)や緘黙(かんもく)などコミュニケーションをとることに不安のある方が広く使えるものになっているかもしれません。
社会は多数派に便利なようにつくられています。いわゆる常識的な考え方は多数派の方が形成してきたものです。障がいのある方、社会的マイノリティーの方が社会の中で生活するにあたって、何が障壁になっているのかについて、多数派の人はなかなか気づく機会もありません。合理的配慮の実践例が積み重なっていくと、マイノリティーの方たちの苦労に気づく機会にもなり、誰もが暮らしやすいユニバーサルデザインの社会をつくっていくことにつながるのではないかと思います。