独特の世界観や魅力紹介-パナマの民族手芸「モラ」作家・奈良悦子さん

中米パナマの民族手芸「モラ」の作品展が18日まで、大町市大町の塩の道ちょうじやで開かれている。布を何枚も重ね、上の布を切り下の布の色柄をのぞかせて絵柄を作るもの。会場には同市のモラ作家・奈良悦子さん(73)が手がけたものや現地のクナ族手作りのものなど約30点を並べ、緻密な手仕事が生み出す独特の美や世界観、魅力を紹介している。

緻密な作業 無心の時間活力に

モラは、現地の先住民クナ族の民族衣装に施される手芸。ボディーペインティングがルーツとされる。色や柄が異なる布を重ね、図案に沿い上部の布に切れ込みを入れ、切った布端を折り込みまつり縫い。露出した下の布の色や柄で絵柄や模様を描き出すもので、根気が要る細かな作業で仕上げる。
看護師を長年続ける奈良さんは、3年前に名古屋市から移住した。モラを知ったのは2009年のこと。多くの患者の苦悩や命に寄り添う日々にあって、新聞に載っていた原色が鮮やかなモラに目を奪われた。「切羽詰まるほどに魂が疲れていた時に出合い、心に刺さった」。すぐさま習い始め、多忙な仕事の合間に没頭し、「集中力が要るから無心になれ、元気になれる」。制作に打ち込む時間が、次の仕事へ向かう活力を支えた。

図案や配色工夫作品に心境映る

現地のモラは原色の布を、小豆色や黒、赤などで引き締めたコントラストが美しく、自然や神々、宇宙などとのつながりを感じさせる図柄で魅了する一方、国内では日本人の感覚に合う図案や色合いで制作されることも。
奈良さん自身で図柄や配色を考えた作品の一つに、深海魚をイメージしたものがある。暗い色や寒色で全体をまとめたが、体の一部の色を当初の茶色から赤系に変更した。「じーっと奥にこもりたい心境の時に作った」図案だったが、差し色を加えると「全然違う印象になり、自分も元気になった」。制作時の心模様も映した作品は、どれも思い入れが強いという。
移住後に同市の文化祭で展示したことが縁で、今展が企画された。「切ったり縫ったりすると下から色が現れ、だんだん絵柄が出来上がっていくのが楽しい。大勢に知ってほしい」と奈良さん。同市での暮らしにヒントを得て「大町らしい題材で作品を作れたら」と意欲を口にする。今後は指導にも力を入れ、地元で取り組んでいる人とのつながりを広げたい考えだ。
奈良さんへの連絡はLINE(ライン)で。

【奈良悦子モラの世界展】18日まで、大町市大町の塩の道ちょうじや。奈良さんや師の大竹千鶴子さん(名古屋市)、現地のクナ族が手がけた作品を展示。午前9時~午後4時半。入館料500円、小中学生250円。水曜定休。ちょうじやTEL0261・22・4018