木曽路ガイドで活躍 マイケル・キングさん 外国人観光客に魅力伝える

「日本の田舎暮らしは楽しい」

「日本の魅力は観光地だけではない。自然と伝統が残る田舎にこそ、その土地を知る奥深さがある。外国人観光客に魅力を伝えられたら」。こう話すのは、中山道や木曽谷を拠点に観光ガイドをするマイケル・キングさん(35、平谷村)だ。
英国出身。2020年、平谷村に地域おこし協力隊員として移住した。3年間の活動中、木曽の歴史や自然、文化に関心を持ち、ガイドとして独立した。
現在は南木曽町読書の山あいに購入した古民家と、平谷村との2拠点生活を送る。町民とも交流し、「中山道三留野(みどの)宿町づくり組合」による三留野宿のパンフレット作成に協力。外国人の目線で宿場の魅力を紹介した。
23歳で来日し、東京や離島など各地で暮らしてきたキングさん。木曽の魅力やこれからの夢を聞いた。

三留野宿マップ 人の魅力も紹介

小雨が降っていた取材日。所々に雲がかかった山を見て「木曽はこういう姿が本当に美しい」と、マイケル・キングさん。三留野宿(南木曽町)から車で10分ほど山に向かった高台にある古民家は、小鳥のさえずりと川のせせらぎが絶え間なく聞こえてくる。
作成に協力したガイドマップ「三留野宿」を見せてもらった。A3サイズを畳み日本語と英語で表記。JR南木曽駅から中山道の迂回(うかい)路、与川道にかけたエリアを地図と文章で紹介している。
旅の僧侶・円空(1632~95年)が作った彫刻が残る等覚寺、豊作を願う住民が旧暦の23日夜に集まり飲食して祈った廿三夜(にじゅうさんや)塔、地域の店や古民家を活用したゲストハウスなど計33カ所。歴史と今が分かるマップだ。
「土地の本当の魅力を伝えるには“人”を知ってもらうこと」。三留野宿で新規ビジネスを立ち上げた農家や、若手作家なども紹介したのがキングさんのこだわりだ。
マップは、妻籠宿(同町)を訪れる外国人観光客に三留野宿まで足を延ばしてもらい、地域の活性化につなげるほか、中山道木曽路全体の発展も目指したいとする初の試み。県の元気づくり支援金を活用して1万部作り、南木曽駅や町の観光案内所、店舗などで配布している。
キングさんに協力を依頼した、中山道三留野宿町づくり組合事務局の田中晃さん(70)は「外国人の目線で、何が求められているのか助言をくれたり、行動してくれたり。とても新鮮で参考になった」。

離島や東京など各地の生活経験

キングさんは、ロンドン近郊のサリー州で育った。大学卒業後は国外の自然豊かな土地で働いてみたいと、外国語指導助手(ALT)として沖縄県の離島に赴任。滞在中、東京出身の妻・美南さん(38)と出会い結婚した。ALTを辞め、隣の離島で3年間、2人でカフェを営んだ。
屋久島(鹿児島県)でアウトドアガイドとして1年間働き、美南さんの出産に伴い東京へ移住。富士山や箱根などで観光ガイドをしたが、コロナで仕事がなくなり、心の原点にあった田舎暮らしを求め、平谷村に家族で移住。地域おこし協力隊員として働きながら、狩猟やわら細工の技術を身に付け、中山道歩きのガイドブックを自費出版した。
ガイドとして独立するに当たり、用意したルートは王道から秘境までさまざま。妻籠宿や馬籠宿が最も人気だが、御嶽古道の麓、王滝村も外国人の関心が高いという。月に20日の稼働日は今春、予約で全て埋まった。
「住民の人間関係が濃く、伝統文化や自然が残る日本の田舎暮らしは楽しい」とキングさん。いずれ南木曽町の古民家に家族で移住し、わら細工や農業にも力を入れる。
インバウンド需要が高まる中、「地域のビジネスとつながりながらガイドの仕事を増やしたい」という。外国人ならではの視点で、木曽のさらなる魅力を見つけ発信していく。