「叱る」(=上下関係を用いて威圧的に接し、恐怖・不安・嫌悪のネガティブな感情を惹起(じゃっき)させてコントロールしようとすること)をしないで、子どもの不適切な行動に対処するにはどうしたらいいでしょう。まずは、ターゲット行動の前後に注目して行動観察をします。不適切な行動を引き起こすきっかけになることを起きにくくするか、不適切な行動の結果が本人にとってメリットにならないようにしましょう。
例えば「授業中に騒ぐ」ということを減らしたい時。騒ぐ前に子どもが授業がつまらなくなってそわそわしている状況があり、騒ぐと先生が「コラ」と怒ってやりとりすることで暇が解消されるといったことがある場合、つまらなくなった時に他の生徒に迷惑をかけない範囲でやってもいい行動を本人と話し合って決めておきます。
例えば落書き帳に絵を描いていてもいいし、「休憩」カードを提示して廊下を一周回ってきてもいい…などです。また、騒いだ時は先生は声をかけて注目せず、やってもいい行動の一覧を指さすだけにして「騒ぐ」ことにかまい過ぎないようにします。
不適切行動をやめるべき理由を、本人が理解できるレベルで説明するのもとても大事です。4こま漫画を使ったり、具体的なシーンを想定したり、本人に納得できる説明を工夫しましょう。
また、やってはいけない行動をとがめるだけでなく、▽代わりにやっていい行動を提案する▽やってもいい時間や場所の条件を指定する(例:鼻をほじるのは人のいない場所でティッシュを使う)▽回数や時間の指定を明確にする(例:ジュースは土日曜に1本ずつだけチケット制)ーといった具体的に本人ができそうな提案をします。これらは口頭で伝えるだけでなく、絵に描いたり具体的な場面を挙げて提案したりなどがお薦めです。
それでも、まだ今の発達段階では、ご本人にとって不適切行動を収めるのが難しそうなら、その行動が起きる状況を当面は回避する(例:外食先で騒いでしまう場合、もう少し大きくなるまで騒ぐのがNGな店には行かない)といったことも必要かもしれません。
そんなこんなでいろいろ工夫して、大人になるまでに良い行動が取れるようにしていきましょう。
【なないろキッズ】 #97 不適切な行動対処は
- 2024/06/27
- 小児科医・新美妙美のなないろキッズ