
夢に向かうか諦めるか…
野村拓未さん(23、松本市波田)は、安曇野市堀金烏川にある市マウンテンバイク(MTB)コースの指定管理者・一般社団法人MSJ(マウンテン・スポーツ・ジャパン、同市穂高)の職員として、MTBの魅力を伝えている。一方で心に秘めた夢は「競輪選手」になること。今の仕事にやりがいはあるが、夢を諦めることはできず…。
子らに楽しさ教えたい
梅雨入り前の晴天となった16日は、午前中から多くの愛好者がコースを訪れ、思い思いに走って楽しんだ。
野村さんは、同法人の代表理事で1996年アトランタ五輪に出場した小林可奈子さん(同市)が主宰する「MTBクラブ安曇野」のメンバーらが挑戦したタイムトライアルをサポート。走り終えた小学生らと笑顔で話しながら、「こういう取り組みをどんどん増やし、子どもたちがMTBの面白さを知ってくれたら」と期待した。
週5日コースで勤務し、利用者の手伝いや乗り方の講習会を開いている野村さん。毎日コースを試走して安全を確認したり、新たなコースを造成したり。「『ここではこういう走りができるな』などと完成したコースを想像しながら、土を掘ったり木を切ったりするのはとても楽しい」と笑顔を見せ、「手付かずの場所がまだまだあり、いろんなことが試せる」と目を輝かせる。
自転車で飯を食うには
小学5年生の時に小林さんのクラブに入り、MTBを始めた。すぐにのめり込み、選手としての実力も付けた。田川高校時代はジュニア日本代表として、国際大会にも何度か出場。進学した松本大でもスポーツについて学びながら自転車に関わった。
大学4年時、卒業後の進路を決める際、「自転車で飯を食うにはどうしたらいいか?」と考え、思い浮かんだのが競輪選手。「自転車から離れたくないし、とにかく体を使って自分を表現したかった」と振り返る。
しかし、競輪選手になるには養成学校に通う必要がある上、MTBしか経験がない野村さんは、同じ自転車でも畑違いなのが不安だ。「夢に向かって突き進むか、諦めるか…」。決断できないまま1年以上が過ぎた。
ただ、現在の仕事に携わり丸2年になる来春には、答えを出すと心に決めている。「自然の中を自転車で走るMTBの楽しさを広め、1人でも『格好良い』と思ってくれる人を増やしたい」と野村さん。今は目の前の仕事に全力投球するつもりだ。