カートレースの“彗星”快走 松本工業高2年の寺島知毅さん

日本のトップ、F1へ一歩ずつ

フレームにタイヤ、エンジンなどシンプルでコンパクトな車体ながら、そのスピード感、ごう音、コーナーでの駆け引きなどが、カートレースの魅力だ。松本工業高校2年の寺島知毅さん(17、松本市岡田松岡)は現在、全日本選手権FP─3部門のランキング1位。中学3年生でレースデビューし、いきなり5位に入賞した。関係者から「彗星(すいせい)のような登場」と驚かれた。
祖父も父もカートレーサーで、池田町と安曇野市のカート場を運営する。2人の影響で3歳からカートに乗り始めた。現在は、ヤマハモーターパワープロダクツのプログラム「FormulaBlueスカラシップ」(資金などの支援制度)のドライバーとして、レースに参戦する。
今後は国内トップフォーミュラ、そしてF1と世界を目指す。

レースデビュー中3で5位入賞

カートの重さは搭乗者を含めて150キロ、最高速度は130キロ。ドライバーを囲うボディーはなく、フレームとタイヤ、エンジンだけ。ステアリング(ハンドル)を操り、右足でアクセル、左足でブレーキを踏む。
地面に近いため、体感スピードは実際より速い。振動も大きく、風の影響もかなり受ける。コーナーでは非常に大きなG(加速度)が横向きにかかる。エンジン音が大きく、レースはすごい迫力だ。寺島知毅さんは、日本で開催されるカートレースシリーズの最上位カテゴリー・全日本カート選手権のFP|3部門第2戦(5月19日)で優勝し、同部門のランキングでトップに立った。
父の卓(たかし)さん(50)は「サーキットあづみ野」社長で、あづみ野F|1パーク(安曇野市豊科南穂高)、サーキットあづみ野(池田町広津)を運営する。卓さんと、祖父の正俊さんもカートレーサーだった。
寺島さんは、女鳥羽中学校では軟式野球部に所属。カートは趣味程度で、レーサーを目指そうとは思っていなかった。部活が終わった中学3年生の10月、「出てみたい」と千葉県茂原市で開かれたレースに出場し、5位入賞した。用具もあまりそろえていない中での好結果に、「案外ポテンシャルがあり戦える」と自信を深めた。
その走りが、国内トップレーサーの関口雄飛さん(36)の目に留まり、所属するチームを紹介してもらった。その後、ヤマハ「FormulaBlue」スカラシップのオーディションを受け、2024年の同スカラシップのドライバーに選ばれた。
昨年、初めて通年で参戦した鈴鹿選手権シリーズでは2位が多く、今年の全日本選手権も第1戦こそ2位だったが、2~4戦は優勝と大活躍。寺島さんは経験に加え、「『絶対に負けない』という気持ちが、去年より強くなった」と自己分析する。
ハンドリング、ブレーキング、アクセルワークと、ちょっとした操作でタイムが100分の1秒変わる厳しい世界。クラッシュすることもある。「限界ぎりぎりを攻める。クラッシュは怖いと思わないが(やってしまったら)悔しいという気持ちが強い」
技術、ミスをしない集中力、強い精神力、筋力など、さまざまな素養が要求されるカートレーサー。現在は、国内外のレースで活躍できるプロドライバーを育成するトヨタの「TGR|DCレーシングスクール」の選考会にエントリー中だ。
フォーミュラレースのプロドライバーに、関口さんらカート出身者は多い。カートから日本のトップ、さらにF1へ。一歩ずつ世界を目指していく。