【信州・まつもと大歌舞伎】 まつもと市民芸術館で7月12~15日 古典と新作華やかに

      「正札附根元草摺」の一場面(撮影・山田毅)
         「流星」の一場面(撮影・山田毅)

3年ぶり8回目の「信州・まつもと大歌舞伎」(実行委員会主催)が7月12~15日、まつもと市民芸術館(松本市深志3)で開かれる。中村勘九郎さん、七之助さんらが、古典と新作の3作品を披露する。会場では縁日横丁や浮世絵の展示などもあり、さまざまな楽しみ方ができそうだ。作品解説や縁日に初出店する店を紹介する。

江戸庶民の気持ちになって 木ノ下裕一さん解説

今回披露する演目は「正札附根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)」「流星(りゅうせい)」「福叶神恋(ふくかなうかみのこい)噺(ばな)」。6月22日にまつもと市民芸術館で開いた「歌舞伎NAVI」で取り上げた2作品の見どころを、同館芸術監督・木ノ下裕一さんの解説を基に紹介する。
【正札附根元草摺】鎌倉時代を舞台にあだ討ちをする曽我十郎と五郎兄弟のエピソードを描いた「曽我物」の舞踊。よろいの下に付いている防具「草摺」を引き合う演目で、「正札附」は数ある草摺引物の中で本曲こそが正統派という意味。
歌舞伎十八番の一つ「勧進帳」の作曲も手がけた四世・杵屋六三郎の長唄で幕が開き、あだ討ちのため、よろいを抱えて勇ましく出かけようとする曽我五郎を、小林朝比奈の妹・舞鶴がとどめて草摺を引き合う。物を引っ張り合う「引合事(ひきあいごと)」は、綱引き神事などの宗教的儀礼などに由来し縁起がいいと庶民に好まれ、江戸時代の正月には必ず上演されていた。
五郎を中村虎之介さん、舞鶴を中村鶴松さんが演じる。中ほどで舞鶴が素襖(すおう)(鎌倉時代の衣装)を脱ぎ、自分と五郎を吉原の遊女と客に見立てて踊る。女性の衣装や小道具が鎌倉時代から江戸時代に変わるところも注目だ。
「荒事(荒々しい歌舞伎の表現)と女形のたおやかさの両方が楽しめる。物語の実年齢に近い2人による色模様とリアリティーも期待して」と木ノ下さん。
【流星】天空を舞台に、流れ星が牽牛(けんぎゅう)と織女の逢瀬(おうせ)にやってきて、隣に住む雷夫婦のけんかの様子を伝えて去って行くというユニークな舞踊作品。その伝えた話とは、天空から地上の端唄師匠の上に夫の雷が落ちた。みやびな雰囲気になって戻ってきた夫に、妻の雷がやきもちを焼いてけんかが始まり―。
流星を勘九郎さん、牽牛を長男・勘太郎さん、織女を次男・長三郎さんが演じる。「雷一家のさまざまな人物を、勘九郎さんが一人で演じ分けるのが見どころ。親子共演も楽しみですね」(木ノ下さん)。
どの作品も、自分が江戸庶民の気持ちになりきって見ることで輝きが増すという。