公演最終日の7月15日まで、作品に登場する場面などが描かれた浮世絵のレプリカ10点をまつもと市民芸術館の一角に展示している。また、日本浮世絵博物館(松本市島立)では、歌舞伎にちなんだ原画数点を公開中(7月末まで)。同館学芸員の五味あずささん(32)に、浮世絵から見た歌舞伎の楽しさを聞いた。
「浮世絵で歌舞伎は主要なジャンル」と五味さん。「正札附根元草摺」は武者絵ジャンルで人気の画題といい、曽我五郎を小林朝比奈が止める原話の「草摺引」(勝川春英)と、そこからアレンジされた小林朝比奈の妹・舞鶴による「草摺引」(豊原国周)の2パターン、さらに劇中、遊女の帯を男性が引くように見立てた場面を描いた「見立草摺引」(鈴木春信・一筆斎文調)を展示。見応え十分だ。
また「神無月顔見せの光景」(歌川国貞)は、顔見世興行を楽しむ桟敷席の様子を描き、女性が手にした扇には、ひいきの役者の俳名が。「歌舞伎の場面も役者の屋号も変わらず、江戸時代から現代へのつながりを感じる。“推し”に熱中する姿は今と同じですね」と五味さん。歌舞伎役者を描いた「役者絵」はブロマイドのように親しまれたという。
公演に合わせ、「浮世絵巡りまちなかデジタルスタンプラリー」(実行委員会主催)と銘打ち、中心市街地20カ所に浮世絵パネルを設置、巡る催しも企画された。作品を選んだ五味さんは「街なかで買い物をしたり、食べ物と一緒に描かれていたりする作品を用意した」といい、「浮世絵は古い時代と思われているが、庶民の日常が描かれ親しみやすい。この機会にぜひ見てほしい」。