信大病院の頭痛外来「見える化」で治療に幅 痛くない時の支障に注目

信州大病院(松本市旭3)に頭痛外来ができて2年余り、今年から新しい診断方法に取り組み始めた。ポイントは、片頭痛の患者は「痛みが出ていない時も苦しんでいる」と、知ること。痛みのない支障に注目することが治療に役立つという。どういうことか。
松本市内の60代女性は30年来の頭痛持ち。特にここ10年ほどは痛みが出る頻度が増えた。ひどい時は、光が目に入るだけでもつらく、暗くした部屋で横になって過ごした。
知人に頭痛外来を教えられ、受診したのが今年1月。すると、専門医から頭痛そのものに加え、痛みがない時にどのくらい生活に影響が出ているかも聞かれた。女性には心当たりが大いにあった。あの激痛にいつ襲われるかは分からない。外に出るのが怖くて、家にこもりがちだった。
「それも頭痛がもたらす支障だ」と診断されて、自分の頭痛のひどさを改めて知った。飲み薬よりだいぶ高価な予防注射薬を試すことに決めた。
注射薬はよく効いた。痛みが出る頻度は7割ほど減り、症状も軽くなった。「痛みがこんなに消えるんだと実感した。4月には外出しようという気になった」という。
頭痛は家族の生活にも支障を及ぼす。
安曇野市内の女子高校生(16)は中学時代、毎日のように痛みが出て飲み薬を服用していた。学校で動けなくなり、迎えに来てもらうこともしばしば。母親(49)は「いつ学校から呼ばれるか分からなかった。私は普段は家にいたが、会社員だったら大変だったと思う」と振り返る。
高校受験が間近に迫った時、頭痛外来で予防注射薬を提案されて使うことにした。痛みは週2回くらいになり、コントロールできるレベルになった。
受験を無事終え、今は部活も不安なく楽しんでいる。「元気になった」と母親。自身も学校の呼び出しを気にしなくなった。

片頭痛は、痛みのある発作期、ない発作間欠期を繰り返す。「多くの患者は間欠期にも発作を気にして、生活に制限を受けている」と指摘するのは信州大病院脳神経外科の花岡吉亀医師。天気や寒暖差、ストレスなど頭痛の原因を察すると、仕事や学校、レジャーの活動をやめて、家族も影響を受ける。
そのことを患者自らに理解してもらうのが新しい診断方法だ。制限の度合いを計り、可視化する。間欠期の支障の方が重いと分かる患者もいるという。
花岡医師がこの診断を採用したのは、予防注射薬に患者が前向きになれるからだ。注射薬は、実用間もない上、飲み薬に比べて高価。だが、適切に使えば、効果は大きい。
発作が防げると生活の見通しが付く。花岡医師は「発作期と間欠期の両方の悩みが減って、『すっきりした』という患者が多い。笑顔で診察室に入ってくるのを見ると、医者になって良かったと思う」と話す。
同病院外来予約センター℡0263・37・3500