自閉スペクトラム症の方の対人関係は個人や年齢によってさまざまで、対人興味がそれほどないタイプの方もいますが、対人興味が強く、人を求めながらうまくいかなくて、傷つきやすいというタイプの方も少なくありません。
後者のタイプの場合、人と積極的に関わろうとするのですが、不器用でうまくいかず、また多くの方より繊細ゆえに、ささいなことでも傷ついてしまい、対人的にトラウマを抱えるという悪循環に陥りやすいです。
低年齢のうちは、同世代に比べて、相手の気持ちをおもんぱかることができにくく、マイペースに自分の思いで関わろうとして、悪気がないのに相手に迷惑になるような言動が目立つこともあります。そしてやや遅ればせに相手の視点に立ち、相手が自分の振る舞いをどう思うかを認識できるようになり(小学校低学年~中学生ごろ)、自分の言動を恥じたり相手の悪意に気付いたりして、対人的に自信を無くして、強く落ち込んでしまうということもしばしば起きます。時には対人的な傷つきがきっかけで、不登校・引きこもりになることもあります。
思春期ごろは対人的に被害的な気持ちになりやすかったり、良い友人関係が築けず苦労したりすることは多いです。特に同世代の同質性の高い仲間関係の結束が高まる時期なので、趣味や思考パターンが異なり、いわゆる「浮いてしまう」ようなタイプの人は、より人間関係の難易度が上がる場合もあります。
元々人と関わることが好きで、人を求めていたタイプの子が、人に傷つき、「人が怖い」「人と関わりたくない」となってしまうこともあります。傷ついて心を閉ざしている場合、とても大きなネガティブな思いを心にため込んでいます。人との関わりを避けることで、何とか自分の心を守ろうとしているのかもしれません。
そのまま人との関わりを最小限にすることで、安定を得られることもありますが、多くの場合は、一定期間を経て、再び「人ともっと関わりたい」という思いが湧いてきます。もう何度も傷ついているので、簡単にはいきません。
次回、対人興味が強く傷つきやすいタイプの自閉の方を、周囲の大人がどうサポートしていくかについて続けます。
【なないろキッズ】 #98 対人で傷つくことも
- 2024/07/25
- 小児科医・新美妙美のなないろキッズ