【信大講座新聞をつくろう2024】 米国から移住の夫妻が営むカフェ 音楽を気軽に 国際交流も

MGプレスが信州大全学教育センター(松本市旭)で開く寄付講座「新聞をつくろう!」。本年度受講した1年生20人が2~4人のグループで、それぞれ関心を持った七つのテーマを取材した。

自由参加演奏やセッションなどイベント開催

音楽を演奏する私たち2人は、県外から信州大に進学し、松本市内の楽器店の多さに気が付いた。演奏環境を調べると、定期的にステージを催すカフェがあった。どんな場所なのか、訪ねた。

縄手通りにある「ストーリーハウスカフェ&バー」(大手4)。2020年3月、クリストファーさん(37)、久美さん(37)のクック夫妻がオープンした店だ。
2人はもともと米国シアトルで暮らしていた。クリスさんは航空関連の会社で働いていたが、オフィスワークが性に合わず、自分の店を構えたいと思うようになったという。
ただ、物価の高い米国で事業を立ち上げるのは難しいと判断し、久美さんの母国である日本へ。気に入ったのが松本だ。久美さんの実家がある横浜市から近く、クリスさんが好きな山や自然を身近に感じられるというのが理由だった。
さらに、私たち同様、音楽の存在感の大きさに気づいた。クリスさん自身、米国でバンドを組んで主にドラムを演奏するなど、大の音楽好き。「日本でも音楽を気軽に楽しめる場所が欲しかった」。音楽が店づくりの柱になった。

多様な人が集う居心地よい場所

今、ストーリーハウスでは定期的に音楽イベントが開かれる。
一つはOpen Mic(オープンマイク)。その名の通り、誰でも参加自由、飛び入りでバンドが組まれる。米国ではメジャーな演奏文化だという。
ある日の回では、30人ほどの客が有志の演奏に耳を傾けていた。演者の男性は「ライブハウスと比べても、生音の響きを楽しめ、気軽に演奏に参加することができる」。客と気軽に会話を交わす光景も印象的だった。
もう一つの定期イベント、ジャズ・セッションも自由度が高い。ある夜は、ホストバンドが4曲披露した後、セッションタイムに切り替わり、サックス、トロンボーン、クラリネットなどさまざまな楽器が演奏された。ホストバンドでピアノを担当する男性は、2年前に勇気を出して店に来たのが始まり。「初対面の人と気が合うとうれしくなる。居心地が良い場所だ」という。
「音楽の楽しさをよりたくさんの人と共有したい」。クリスさんは、目を輝かせながらそう話す。
店は、外国の文化や言語の交流の場にもなっている。海外からの観光客もいて、演奏を話の種にさまざまな言語が飛び交う。「地元の人でも、クリスと一言あいさつを交わすだけで非日常感を味わってもらえる」と久美さん。Hangout(ハングアウト)という、やはり出入り自由で英会話を楽しむイベントも開いている。
クックさん夫妻の気さくな人柄と、店の扉から漏れる、楽しげな演奏の音にひかれ、世界からいろいろな人が集まる。松本のカフェから、言葉の壁も国境も超えた交流の輪が広がっていた。

取材を終えて

小木曽希武(人文学部) 初めての本格的な取材だったが、音楽という共通の趣味があったこともあり、店主さんとすぐに打ち解けることができた。ライブの取材では、店主さんの提案でセッションに参加し、初めて会う人々と楽しく交流することができた。
長嶋祐加(医学部) ジャズ・セッションの取材ではお客さんから話しかけてくださり、本当に温かい場所だと感じた。お客さんは皆楽しげな表情をしていて、クリスさんの「音楽を通じた交流場所をつくりたい」という思いが実現されていると感じることができた。