【農トピックス】#4 有機栽培のニラ

ギョーザ業者が進める6次産業化

ギョーザ製造のためにニラ栽培まで手がける会社が、塩尻市内にある。最近は有機栽培に取り組み、工場の認証取得も目指す。地方の食品会社がなぜそこまで?会社を訪ねた。
きららファーム(洗馬)は、自社の畑で年間20トンほどのニラを栽培する。周辺の協力農家からも同程度かそれ以上の量を集める。全て加工用だ。
親会社が、ギョーザやワンタンなど中華点心を製造販売する美勢商事(広丘堅石)。副社長の野本孝典さん(66)は、きららファームの代表でもある。以前は農業と直接の縁がなかった。
転機は2008年。前年末から年明けにかけて中国製ギョーザの食中毒事件が世間を騒がせた。中国産野菜が敬遠され、食品大手はニラやネギなどを国内で調達するようになった。あおりを受けて、美勢商事は思うように買えなくなった。
そこで「自分で作ろうという発想になった」と野本さん。09年、きららファームの前身、信生(しんせい)が農業生産法人に。「近くの空き農地を買ったり借りたり、栽培面積をどんどん増やしてきた」
この間に気づいたのが有機へのニーズだ。グループとして農産物生産から食品製造、販売まで手がけると、「有機を求める声が増えてきた」という。
ただ「有機は大手にはできない。作れても高い」と野本さん。大手の生産量に見合うほどの市場規模は、まだない。中小業者の好機というわけだ。
野本さんは「土着の企業だから県内で原材料を調達したい」という。自前のニラ栽培を有機化しつつ、有機生産者の仲間を増やしていく考えだ。
有機栽培を始めた畑で育つニラは「茎が幅広で背が高い」と、顔をほころばせた。安全性に加え、生産量も増えれば言うことなしだ。加工工場は日本農林規格(JAS)認証が見込まれるという。
ブドウやレタスが特産の地で、意外な有機作物の6次産業化が進んでいた。