林内ではかない命をつなぐヒメボタル(筑北村・千曲市境の冠着山)

梅雨明け間近の冠着山の夜、林内を彩るヒメボタルの光跡。幽玄神秘な黄金色の舞を繰り広げた=ニコンD5AF-Sニッコール17~35ミリ7月13日午後8時30分から45分間露光

夜更けに繰り広げられる光の舞

夏の夜、山深い林内で一時期だけ、ひそかに繰り広げられる光の舞。7月13日夜、筑北村と千曲市境の冠着山(姨捨山・1252メートル)でヒメボタルに出合った。
ヒメボタルは、コウチュウ目ホタル科の昆虫。日本固有種で森林に生息する「陸生ホタル」である。水辺に生息し、長い光跡を残しながら舞うゲンジボタルやヘイケボタルは「水生ホタル」だ。
13日午後8時半。風が弱まった林内で、ヒメボタルの明滅が始まった。黄金色の光を放ち飛び交う雄の光跡が、にぎやかさを増していく。後翅(こうし)が退化して飛ぶことができない雌は、林床の草の茎や葉につかまり、懸命に「ピカッ、ピカッ」と強烈な光を放ち、飛び交う雄にシグナルを送る。命をつなぐ光の舞は、波状的に夜更けまで続いた。
撮影は、45分間のコンポジット(合成)で狙い、にぎやかな光跡の雰囲気を表現してみた。
撮影に当たりヒメボタルの生態を調べた。成虫は体長7~9ミリと小さい。羽化してから雄は7日、雌は3日のはかない命と知り、驚いた。撮影は午後10時に終了したが、日付を越えてヒメボタルに寄り添った。小さな命のリレーに、こみ上げてくるものがあった。美しい光と命の感動をありがとう-。感謝を伝え、夜が明け始めた冠着山を後にした。(丸山祥司)