繊細で飲み飽きない味
塩尻峠の標高850メートル前後の国道20号沿いに、2015年に開業したサンサンワイナリー(塩尻市柿沢)。開業当時から栽培、醸造に携わるのが「ファクトリーマネージャー」の田村彰吾さん(35)だ。子どもの頃から「ルビー色の酒」の華やかな香りに興味があったという田村さんが醸すワインとは。
「ワインは家族などと食事をしながら楽しく飲む酒。気が付いたらボトルが空いていた─というのが理想」
香りや味が「がつん」と、くるのもいいが、田村さんが目指すのは、繊細な香りを感じながら、うまさがじわりと染み渡るようなワイン。「飲み飽きないということ。コンクールには不向きかもしれないが」と笑う。
昨年は夏の猛暑と9、10月の雨量の少なさで「よく熟した最高のブドウに仕上がった」。今年は、それをさらに上回るように、ブドウの木の光合成の効率を高める栽培方法を試験。果実に含まれるポリフェノール量が増えることに期待する。
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大津市出身。父親が大の外食好きで、中学3年の頃に一緒に行ったイタリア料理店で、赤ワインの香りを初めて嗅ぎ、「こんな香りがする酒があるのか」と衝撃を受けた。
山梨大に進学。当時の同大工学部にあった「ワイン科学特別教育プログラム」でワインに関する専門知識を6年間学び、15年、同ワイナリーに就職した。
ワインを飲み始めた頃はインパクトの強いものを好んだが、大学生の後半に知ったフランス・ブルゴーニュワインの、上品で繊細な味わいに魅了され、その味が今のワイン造りの原点になっている。
「地域とのつながりを深め、ここから日本ワインの飲み手を増やしていきたい」と願う。
【沿革】
さんさんわいなりー 社会福祉法人サン・ビジョンが運営。2011年、塩尻市柿沢の標高840~864メートルの耕作放棄地にブドウ畑を整備し、栽培開始。15年、ショップとレストランを併設したワイナリーを開業。同年秋、自園原料100%のエステートワインの仕込みを初めて行った。
【田村さんおすすめ この1本】
柿沢メルロ樽(たる)熟成2022(750ミリリットル 3740円)
【相性のよい料理】
脂身の少ない肉を使ったすき焼き、焼き鳥など肉料理全般
【連作先】
サンサンワイナリーTEL0263・51・8011