桃の季節が到来し、信毎メディアガーデン(松本市中央2)3階のレストラン「レストロリン」のメニューに、今年も「マグレ鴨(がも)のローストと桃の赤ワイン煮」(4400円)が加わった。オーナーシェフの小林昌和さん(54)が、神戸市内のフランス料理店で修業を始めた20歳の時から作り続ける、「師から受け継ぐ一皿」だ。
赤ワインや砂糖などで煮た丸ごと一個の桃に、鋳鉄製のフライパンで焼いた鴨肉を重ねるように添え、フォンドボーなどを加えた赤ワインソースをかけて仕上げる。桃、鴨肉、ソースが織りなす上品で深みのある味わいが人気で、遠方からもファンが駆けつける「至極の一品」だ。
考案者は、神戸の名店「コム・シノワ」のオーナーシェフ荘司索(さく)さん。小林さんは同店で足かけ9年間腕を振るい、不動の人気メニューの一つが「マグレ鴨─」だった。「『桃の季節になると食べたくなる』と大勢のお客さまが足を運んでくださった」(小林さん)。
コム・シノワは、現在はカフェとパンの店に。「この一皿を食べられる店はほとんどない」と残念そうに話す小林さんは、今も荘司さんと同じ作り方と盛り付けで提供する。「アップデートしたいと思うが、これが完成形。これを超えるアイデアは出てこない」と脱帽している。
「荘司シェフは、料理人としての全てを教わった人」と小林さん。「『マグレ鴨─』には発想や料理に対する姿勢など、師匠の教えが凝縮されている。僕にとって“消してはいけない味”です」と話す。
今月中旬か下旬まで提供。同店TEL0263・32・8911