松本市の山辺小6年1組 「山辺藍」育て染め体験

松本市の山辺小学校6年1組(担任・村山茂樹教諭、33人)は本年度、総合的学習の時間に、藍の栽培から染めまでの一連の活動に取り組んでいる。
今はブドウで有名な山辺地区だが、昔は「山辺藍」の栽培が盛んな、県内有数の藍の産地だった。これまでも赴任校で地域にちなんだ学習を取り入れてきた村山教諭が、「山辺の歴史や文化を知り、より地元愛を深めてほしい」と発案。児童も興味を持ち、希少な山辺藍を守り伝えようと積極的に活動する。
地域住民から募り、見つけた種を5月に植えたものの全滅。再び苗を分けてもらい、世話を続けて7月17日に一番藍を収穫した。翌日には生の葉で染める珍しい「生葉(なまば)染め」も体験した。山辺藍に懸ける「山辺愛」とは。

住民から種入手 地道に世話して

江戸時代末期から明治にかけ、現在の松本市山辺地区で栽培されていた「山辺藍」。一般的なとがった藍の葉と違い、丸い葉が特徴だ。
山辺小6年1組では、5年時に地域について地元在住の元教員から話を聞いた。かつて藍の栽培が盛んだったが、安い輸入品に押されて衰退し、養蚕、ブドウへと産業を変えてきた山辺地区。地域の人がたくましく生きてきたことを知った。
今では、山辺が藍の産地だったことを知る人は少ない。しかし、地域伝統の「お舟祭り」のお舟(山車)も藍の取引で得たお金を元に造られたこと、藍蔵が残っていることなど、今も山辺の文化に影響を残す。子どもたちも次第にその存在や歴史に興味を持ち、山辺の伝統を絶やさず、発信していこうと学習を進めてきた。
春先に担任の村山茂樹教諭が全校児童に呼びかけ、地域住民から山辺藍の種を入手した。ポットに植えたものの芽が出ず、全滅の危機に。再度苗を分けてもらい、学校敷地内の元ブドウ畑をクラス全員で開墾、大量の石を取り除いて土壌改良をして植え、地道に世話をしてきた。

学習と郷土への愛深めて

やっと訪れた、7月中旬の山辺藍初収穫。一般に藍染めといえば生の葉を3カ月発酵させた「すくも」で染めるが、まずは「生葉染め」に挑戦した。
浜染工房(庄内2)の濱完治さんら3人が指導。たらいに山盛りの藍の葉と水を、少しずつミキサーにかけると、藍は鮮やかな緑色の液体に。繰り返して染汁を増やしていく。
濱さんが「藍はもともと薬草で、傷に付けたり食用にしたりした。ジュースやアイスにもなるよ」と説明すると「へえー」と効能に興味津々。これをさらしに入れて搾ると「抹茶みたい」との声も。一人一枚の綿ハンカチを輪ゴムや割り箸などで止め、模様をイメージしながら、藍の液とあくと交互に浸し、染めていった。
ハンカチを広げるとおのおのの模様に歓声が上がる。細萱海美(ほそがやうみ)さん(11)は「みんなで頑張ってきたから、成功して良かった」。花岡錬太郎さん(12)も「抜根や草取りなどに汗を流してきた苦労が、こんなきれいな布になってうれしい」と興奮した様子。淡い青緑色に染まったハンカチを自分たちの藍畑の上につるして乾かした。
濱さんも「こんなに喜んでくれるとは思わなかった。この地域に藍が残っていたことも貴重で、天然素材の良さに触れ理解してもらえたのでは」。
準備に奔走し、児童を見守ってきた村山教諭も「子どもたちが自分の地域を知って愛してくれたら」と話し、学びで得たことを広く伝える伝承者になってくれたらと願う。
今後、2学期にすくも作り、年明けに藍染め体験を予定。学習の最終ゴールは2月、旧山辺学校校舎で行う一般公開予定の学習発表会だ。山辺藍を通した子どもたちの学習と郷土への愛着は、着実に深まっている。