松本山雅FCレディースの後藤優里花選手(24)は今春、長野市での仕事を辞めて松本市に引っ越して来た。設立間もないアマチュアチームに加わる決断を後押ししたのは、新しい働き口が決まっていたこと。スポーツ選手を支援したいという企業と山雅の連係プレーで、仕事とサッカーに集中できている。
レディース 後藤優里花選手 練習も仕事も頑張れる
後藤選手には二つの肩書がある。一つは山雅レディースのDF。もう一つは梱包(こんぽう)・物流会社の内藤ロジテック(松本市笹賀)社員。どちらも昨年までは想像もしていなかった。
諏訪市出身。東海大諏訪高校の女子サッカー部でプレーした。千葉県の大学を経て、長野市のフィットネスジムで働きながら楽しんでいたのはフットサル。サッカーに戻るつもりはなかった。
転機は昨年末。フットサルの大会で知り合った山雅レディースMFの倉石皆里(みさと)選手(20)に「一緒にやろう」と誘われた。
この年に設立されたレディースは、高校生以上の選手が少なく、U─15(15歳以下)の選手らと活動していた。スタッフからも「将来に向け、チームの土台づくりに力を貸してほしい」と請われた。「やっぱサッカーやりたい」と心が動いた。
ただ、長野から松本に生活基盤を移すのは不安だった。そんな時、内藤ロジテックを紹介された。
引退後の人生見据えた支援
同社はスポーツ支援に力を入れている。「スポーツが好きだから」と内藤学社長(51)。野球やバスケットボールに育てられたという思いもあるという。働きながらプレーできる環境を提供しようと昨年、軟式野球チームをつくった。
スポーツを通じ、若手人材との接点ができるのもメリット。野球チームは2人が社員になった。「プロの物流人を育てるつもりで正社員にしている。スポーツで一生、食べていける人は一握り。会社では、社会人としての価値を高めてもらいたい」と内藤社長。選手のセカンドキャリアも見据えた支援だ。
山雅や3人制バスケットボール男子の「信州松本ダイナブラックス」にも、働き口を求める選手の紹介を依頼。後藤選手は、山雅レディースを運営するNPO法人松本山雅スポーツクラブの柄澤深理事長が仲介した。
面接し、今年4月の入社が決まった後藤選手は、3月に山雅レディースに加入。社会人としての転職と選手としての移籍が、同時にスムーズに運んだ。
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仕事は午前8時から午後5時。練習は週3日で午後7時から。週末には試合がある。長野市で働いていたら厳しいスケジュールだ。
後藤選手は「今はサッカーと仕事がいいバランス。練習がすごい楽しみだから、仕事が頑張れる。私はサッカーが好きなんだと、改めて思った」と充実した表情を浮かべる。
内藤社長は、今後もスポーツ支援を続ける考えという。