伝統の和風建築を今に伝える松本市の「池上百竹亭(いけがみひゃくちくてい)」(丸の内)で8月24、25日、江戸時代後期の歌人良寛(1758~1831年)の遺墨を紹介する「良寛書画展」が開かれる。市内の熱烈な良寛ファンが生地・新潟県出雲崎町にある「良寛記念館」の協力を獲得。展覧会実現の運びとなった。
良寛は裕福な名主の家に生まれながら18歳で出家。修行の道に入り、各地を転々とした。のち故郷越後に戻り、市井の人々への慈愛に満ちた生涯を送った。子どもを愛し、毎日日没まで一緒に遊んだと伝わっている。
良寛は歌人、書家として有名で、優れた和歌や漢詩が多い。ノーベル賞作家の川端康成も「美しい日本の私」で「現代の日本でもその書と詩歌をはなはだ貴ばれている」と述べている。
良寛に魅せられた一人が信州大附属病院医師の嘉嶋勇一郎さん(48)。2004年の新潟県中越地震で医療ボランティアとして現地に派遣された際、良寛を知った。「良寛の清らかな生き方が書にも表れている。世の中に広めたい」と、良寛のファン仲間と記念館に出向き、展覧会開催を懇請した。
熱意は館を動かし、遺墨11点や良寛を描いた絵画など所蔵品計35点の出展が決まった。「長野県では17年12月に長野市で開催して以来の展覧会」(永寶卓(ながとみたかし)館長)という。
百竹亭での開催にもこだわった。松本の呉服商池上喜作(1890~1978年)の元邸宅で、情緒と品格のある和室や茶室、閑静な庭がある。現在は松本市の社会教育施設となり、茶道や生け花教室などが行われている。
嘉嶋さんは「池上は短歌と俳句に造詣が深かった一級文化人。彼の功績や名建築も知ってほしい」。百竹亭側も「素晴らしい展覧会の会場になるのは光栄」とする。
両日とも永寶館長によるギャラリートークがある。入場料300円。百竹亭TEL0263・32・0141