猛暑から品質守る“収穫の残暑”
稲刈りが暑さで早まりそうだ。6月以降の高温で、多くの田んぼでいつもより早く穂が出た。同じような状況だった昨年は、一部で刈り遅れによる品質低下が指摘された。それが今夏、コメの不足感の一因になっている。県の担当部署は、平年より1週間ほど早く稲刈りができるよう呼びかけている。
「どんどん出来上がってきている」。松本市島内の農業法人「北清水」の清水久美子社長は、穂の状態からそう感じているという。
同社は20ヘクタールでコシヒカリや風さやかなどを栽培。宮内庁に新嘗祭(にいなめさい)に使うコメを献納したこともある。
日々の見回りで注目するのは、稲の枝茎より穂だ。それがお盆以降、どんどん熟すのが見てとれるという。
昨年も同じような経過だった。そして、まだ稲全体は青みが強い8月のうちから、汗だくになりながら刈り取りを始めたという。
今年は、高温は昨年並みだが、雨が多く、稲にとっては昨年よりましな状況。だが、やはり平年と比べると1週間ほど早い稲刈りになりそうだと見込む。
ポイントは「胴割れが一番ダメ」と清水社長。熟し過ぎると米粒にひびが入りやすくなる。昨年、北清水ではほとんどなかったが、多くの農家が被害に遭い、2等米や3等米の比率が高くなった。
胴割れ米はもろく、精米するときに砕けてしまうものもある。同じ量の玄米でも食べられる量が減る。昨年は米どころの新潟などで等級低下が著しく、コメの不足感につながっている。北清水にも、取引の全くなかった流通業者から在庫の問い合わせがあるという。
県松本農業農村支援センターは、高温に応じた穂の成熟時期を予測してホームページなどで発信、適期刈り取りを呼びかけている。「近年は気候の変化が激しくて、昔からの農家の知恵の蓄積通りにはなかなかいかない」と担当者。
収穫の秋ならぬ“収穫の残暑”が当たり前になるのかもしれない。