型の一つを披露する楊理事長。(1)左手で立てた棒を右手でつかみ(2)棒先を飛ばすように前方に打ち下ろし(3)左脇に収める。左右で同じ動きを繰り返す。「自由自在にできると、ブルース・リーのヌンチャクのようにできて楽しいよ」と楊理事長
ゆったり動いて自然に体ほぐす
棒を操る中国武術がある。その名は鞭杆(ベンガン)。棒と一緒に体を太極拳のようにゆったり、滑らかに動かす。すると、あちこちの関節や筋肉がほぐれて、特に肩周りに効く。護身術の一種だが、健康法にもなるという。
中信地区では「長野鞭杆の会」が定期的に講習会を開いている。4日、松本市鎌田体育館に20人余りが集まった会では、鞭杆協会の楊崇理事長(47)が講師を務めた。
4時間の講習は、前半の準備体操と後半の太極鞭杆(基本動作)の2部構成。前半は棒を使って遊ぶという趣旨で、関節や筋肉をふんだんに動かす。
例えば、バトン競技のように片手で棒を回す。あるいは、両端を持ったまま棒を背中から前に持ってくる。この段階で肩の周りがゴリゴリといい、腕の筋がギュッとひねられる。肩に担いでシーソーのように上下させる運動もある。
不思議と痛みや苦しさはあまりない。棒のおかげで可動範囲が広がるのだという。「意識せずとも力が出る。棒によって体の機能が拡大するんです」と楊理事長。てこの原理の働きだろうか、確かに無理なく体を動かせる感覚がある。
前半の体操は、棒を体の脇で上下左右に回したり、突き出したりと続く。合間には、棒を指先や足の甲に立ててバランス感覚を養ったり、落ちる棒をつかんで動体視力を鍛えたりすることも。
棒を用いてさまざまな身体感覚を刺激する鞭杆。楽しみながら自然と体がほぐれることをうたう。「参加者の目が輝いていくのが分かる。体にいいので徐々に広げていきたい」と、鞭杆発祥の中国・山西省をルーツに持つ楊理事長は期待する。
講習会は、服装は自由。鞭杆の貸し出しもある。次回は11月10日。
【メモ】
【鞭杆】古く中国で羊飼いが使っていた鞭(むち)付きの棒が名称の由来で、現在は棒とそれを使った武術両方を指す。棒の長さは約120センチ。相手をたたいたり突いたり、逆に攻撃を防いだりする動きを体系化している。日本では2009年に特定非営利活動法人鞭杆協会(東京)が設立。現在、会員は約500人という。