時代のニーズに対応
木曽町福島の宿場町に蔵を構える七笑酒造。木曽駒ケ岳山系からの伏流水で仕込んだ酒は、口に含むと美しい山景が目に浮かぶような喉越しが特長だ。5代目で常務の川合貴裕さん(31)は酒造りに携わり8年目。伝統の味を引き継ぎつつ、時代に合った酒を造ろうと、挑んでいる。
県産米を、井戸からくみ上げた軟水で仕込む。穏やかな味と香りを楽しめる定番酒を柱に、飲んだ時のインパクトを強調した季節限定酒で新境地の開拓に挑戦する。
4代目の父・潤吾さんの長男。日本大生産工学部でマネジメントを学び、合気道部で主将を務めた。
家業を継ぐよういわれたことはないが、意識はしていたといい、卒業後は山形県の酒蔵で3年間修業。その間、大吟醸酒の醸造を担当し、完成した酒を味わった時の感動を胸に古里に戻った。
2019年に七笑酒造に入って間もなくコロナ禍に。酒の販売が伸び悩み「今までと違ったものを」と、新銘柄の限定酒「木曽義仲」に着手した。
毎年、違うテーマで醸す酒で、これまで木曽の酵母や木曽の郷土食「すんき」由来の乳酸菌を使ったり、低アルコール酒を造ってみたり。失敗もあったが「そこから学びがある。何があってもプラス思考」。合気道で培った心構えだという。
現在は酒造りの一方、商品PRのため国内外に出向き消費者の反応を体感、味の方向性や販売戦略に生かす。自身は定番酒のような飲み飽きない酒が好みだが、将来の経営者としてニーズの多様化にどう対応していくのか手腕が問われる。
「今は七笑らしさを探す旅の途中。木曽にある酒蔵だからこそ、できることを見付けていきたい」
【沿革】
ななわらいしゅぞう 1892年創業。当時は「木曽錦」「七笑老松」の2銘柄だった。社名の「七笑」は木曽駒高原にある地籍名や「笑う門には福きたる」などにちなむ。2021年から4年連続で「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」で最高金賞を受賞するなど国内外で受賞多数。
【川合さんおすすめこの1本】
七笑吟醸酒(720㍉㍑ 1540円)
【相性のいい料理】
白身魚の刺し身やソテー、天ぷらなど
【連絡先】
七笑酒造TEL0264・22・2073