松本市渚の会社員・山田勇佑さん(23)は、9月15日に長野市で開く「県障がい者スポーツ大会」陸上男子1500メートルの知的障がい区分で6連覇を目指している。自己記録(4分38秒62)の更新も狙い、正念場となる夏のトレーニングも「走るのが楽しい」と全力疾走している。
夏場のきつい練習にも気合
21日は、定期的に指導を受ける「信州伴走・伴歩協会Guiding Star(ガイディング スター)」代表の大谷拓哉さん(57、松本市)と練習。室内トレーニングの後、屋外のトラックで1500メートルのタイムを計測した。
前半で加速し、苦しい中盤を乗り切ってラストスパート。タイムは上々だったが「走る気はいっぱいあるけれど、心臓がどきどきし過ぎて体がついていかなかった。きっちり練習して本番を迎えたい」と山田さん。大粒の汗が吹き出た。
視覚障がい者のランニングやウオーキングをサポートし、元パラリンピアンの伴走者も務める大谷さんは、その経験から山田さんに現在の課題や今後の練習法を伝え、「きつい練習でも真面目に取り組む。走ることが大好きなので、そのまま伸ばしてあげたい」と、時には活を入れながら導いている。
全国大会でも活躍
知的障がいがある山田さんは、波田小学校3年時に担任から「クラス対抗リレーで一緒に走ろう」と誘われ、優勝したのが走る楽しさを知るきっかけに。波田中学校を卒業し、県松本養護学校高等部に進学後、本格的に陸上を始めた。
2016年に県障がい者スポーツ大会の1500メートルに初出場(少年の部=19歳以下)し優勝。20~22年のコロナ禍による中止を挟み、5連覇した昨年は4分42秒75をマークし、青年の部(20~35歳)の従来の大会記録(5分21秒93)を大きく塗り替えた。今年は、前年の記録で選ばれる「全国障がい者スポーツ大会」(11月)にも初出場する。
全国大会でも活躍し、2022年に「スペシャルオリンピックス日本夏季ナショナルゲーム・広島」で初優勝。長距離にも挑戦し、昨年11月の「松本マラソン」で、初めてのフルマラソンを3時間12分で完走した。
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中高生から社会人の中長距離選手を育成する上伊那地域のクラブチーム「RUNJOY」に所属し、練習会で速い高校生らと一緒に走り、刺激を受けている山田さん。市内の大型商業施設で働き、趣味も「走ること」といい、行きたい場所を電車で訪れ、大好きなコーヒーチェーン店を巡ったり、さまざまな信号機を見たりしながら走る。
母の深雪さん(47)は「おっとりしているが、負けず嫌いで頑固な面も。でも真面目で優しい」と見守り、「走って結果を出すことで自信を付けてほしい」と応援する。
「本番は腕を振って必死に走り抜きたい」と山田さん。6連覇に向けて気合十分だ。