【ビジネスの明日】#64 明日華社長 上條政次さん

メンタルケア 重症化する前に

「現代社会で、生きづらい、働きづらい人たちの居場所にしたかった」。こう語るのは、障がい者の就労支援を行う「明日華」(松本市浅間温泉3)の上條政次社長(62)だ。昨年12月には、障がい者認定を受けていない人のメンタルヘルスケアなどを行う「しなの里明日華」(同市会田)も設立。働く人の心と体をサポートする。
明日華で行っている就労移行支援は、うつ病や気分障害などで休業している人に対し、ボランティア活動や職場体験、ヨガ・瞑想(めいそう)、グループワークなど、独自プログラムで復職を支援。
また、就労継続支援B型では、稲を育ててしめ縄など、オリジナルのわら製品を作るといったユニークな仕事も提供している。
一方、しなの里明日華では、障がい者認定を受けることに抵抗がある人などを対象に、メンタルヘルス面のサポートをする。
二つの会社を設立した理由について「障害者認定を受けるか受けないか、補助金が出るか出ないかなど、サービスを受ける上でのメリット、デメリットがあることをまずは知って」と強調する。
さらに力を入れたいのがメンタルヘルス不調を未然に防ぐ「早期発見・早期予防」。心の健康を崩している人からは「気付きにくいが必ずサインが出ている」とし、「そうした状態を放っておくと、一気に重症化する。そうなる前のケアが必要で、この段階でのサポートのビジネスモデルをつくりたい」と見据える。

松本市出身。長年、丸の内病院(同市)で放射線技師として勤務。55歳で早期退職する直前から携わったメンタルヘルスケアの「ストレスチェック制度」で、制度の実施者が高ストレスで疲弊している姿を目の当たりにし、「こうした人たちの居場所をつくりたい」と決意。2019年に「明日華」を設立した。
「しなの里の設立から10年かけ、自宅のある四賀地区に東京ディズニーランドのような『夢の国』をつくるのが大目標」
生きづらかったり、働きづらかったりする人たちが農作業をしたり、アクティビティーを楽しんだりする拠点をつくり、同時に、同地区の人口減少や農地の荒廃化などといった地域課題も解決するという構想だ。
「自分が幸せになるためにやっていることだが、周りの人が幸せにならないと自分も幸せにならない」。多くの人たちとの触れ合いを大切にする。

かみじょう・まさつぐ 松本市今井出身。松本工業高から都内の放射線技師の専門学校に進学。卒業後、地元に戻り、病院で放射線技師として長年勤務。2019年6月、明日華、23年12月、しなの里明日華を設立。産業カウンセラー、キャリアコンサルタントの資格を持つ。