81歳 洋服作りに励む上原紀子さん「年を取ってもおしゃれに」

ジャケットにTシャツ、チュニック、ズボン─。松本市清水の上原紀子さん(81)の自宅には、おしゃれな洋服がずらりと並ぶ。どれも上原さんの手作りだ。洋裁を始めて半世紀以上。自作の洋服には常に遊び心をプラス。「年を取ってもおしゃれに」がモットーというファッショナブルなお年寄りが輝いている。
8月6日の取材日、上原さんが着ていたボーダー柄のTシャツも手作りで、円形に切ったTシャツと同じ布を胸元に縫い付けてポイントに。ズボンの裾に切り替えを施すなど、普段着にも、おしゃれ心と遊び心があふれている。
若い頃、洋裁学校で基本を習い、「自分の洋服は自分で作っていた」という。24歳で結婚し専業主婦に。洋裁が得意だった姉に習い、さらに技術を磨いた。「夫のパジャマ、自分のワンピースやコート、子ども服などいろいろな服を作った」と上原さん。体が大きかったり、細かったりで、なかなか既製服が合わない知り合いの服も作ったという。
「体形を見れば、サイズが分かる」といい、採寸をしないのが上原さんの流儀。上原さんが仕立てた洋服を着た友人、知人から「ぴったりだったよ」と言われるのが、何よりうれしいという。
長年、洋裁を続けている上原さんの今の「マイブーム」は、伸縮性のあるニット素材を使うこと。45歳の頃、体操教室に通い始め、レオタードを作ったのが、ニット素材との最初の出合い。「ニットは脱ぎ着がしやすく、体も動かしやすい」が、お気に入りの理由という。伸縮性があるため、縫うのが難しそうだが、きれいに仕上げるこつを独学で習得したほどだ。
洋服を作り始めて約60年。「簡単に作れて、着るのも楽。こざっぱりとして色合いがきれい」がこだわり。洋服は完成させた時の達成感もいいが、「生地が大好き。触れているだけで癒やしになる」と笑顔を見せる。
81歳になっても細かな作業ができるのは、「老眼鏡いらず」のため。また体操教室に通うほか、作業中に肩を回したり、腕を伸ばしたりして肩凝りにならないようにも心がけている。
10年前、名古屋市から夫の実家のある松本市に移住した。現在は一人暮らしだが、その寂しさも洋服を作ることで紛れるという。「デザインを考えて、布にはさみを入れる瞬間が快感」と上原さん。
最近、孫の一人が家庭科の教員資格を取ったといううれしい知らせもあり、「勧めたことはないが、自分と同じような道に進んでくれたのが不思議」と、目を細めた。