来年以降も…継続に期待の声
ぼんぼんとても
きょうあすばかり
あさってはお山の
しおれ草─
女の子がほおずきちょうちんを持ち、浴衣を着て歌い歩く松本の伝統行事「ぼんぼん」の歌詞だ。地区により微妙に異なって伝わる。男の子が青杉を盛ったみこしを担いで巡る「青山様」と共に、松本市の重要無形民俗文化財に指定されている。
近年は少子化のため、複数の町会で集まったり、男子と一緒に青山様を担いだりと工夫する地区もあれば、途絶えた地区もある。
「ぼんぼんを絶やすな」と、蟻ケ崎西町会のPTA子ども会は8月下旬、町会と協力し、地元の夏祭りの中で行った。一度は途絶えた同町会のぼんぼん。来年以降も夏祭りに組み込んで続けては─と期待する声もある。
髪飾り作りや歴史など学ぶ
松本市の蟻ケ崎西町会事業部と「ありにし町内子ども会」は8月24日、子どもからシニアまで楽しむ「蟻西夏祭り×ぼんぼん」を同町会公民館で開いた。同町会で途絶えていたぼんぼんを復活する目的で、浴衣を着て街中を歩くだけでなく、その歴史や意義を知ろうと、松本市文化財課の一ノ瀬幸治さん(44)を招いて話を聞いた。
一ノ瀬さんは「ぼんぼんはお盆の行事で、300年ほど前、江戸時代中頃に現在の東京でスタートし、松本に伝わった。以前はいろいろな所でやっていたが、今は松本だけに残っている」と説明。列を組んで歌いながら歩く盆踊りの一つ、などとも教えた。
座学の後は、ぼんぼんの歌を練習。その後、浴衣を着た女の子たち10人ほどが、赤やピンクなど紙で作った髪飾りを着け、ちょうちんに入れたろうそくに火を付けて屋外へ。歌いながら公民館周辺を歩いた。
開智小学校6年の桐原由佳さん(12)は「ぼんぼんは初めて。浴衣でちょうちんを持つ、いつもと違う服装で街を歩くのは、いい経験になった。これからも続いてほしい」と話した。
同町会では10年以上前からぼんぼんは行われておらず、女子も男子の青山様に参加していたという。子どもの中から「浴衣を着て歩きたい」という声が出たこともあり、何とか復活できないかと模索したが、青山様と同時期に行うには人手が足りない。今年は事業部が秋の文化祭を取りやめ、夏祭りを企画したため、一緒に行うことにした。
ありにし町内子ども会会長の岡野裕子さん(47、蟻ケ崎4)は松本生まれの松本育ち。小学生の頃は既にぼんぼんはできず、法被を着て青山様に参加したという。「大きい子が髪飾りを作ったり、小さい子に歌を教えたりといった伝統を、このまま途切れさせてはいけない─という思いも、今回復活させる一つのきっかけになった」と話す。
一ノ瀬さんによると、ぼんぼんが行われなくなったのは、担い手である女の子が少なくなっただけでなく、道路事情なども関係があるという。近年はコロナ禍を理由に休止した町会もあるという。
岡野さんは「浴衣を着て歩くぼんぼんは、女の子の憧れだった。来年以降も夏祭りに組み込んでもらえたらありがたい」と願う。
盆に帰る祖先の霊が、現世で迷わないように迎えるぼんぼん。8月下旬の開催は、本来の時季からずれている。だが、子ども同士の縦のつながりをつくり絆を強める上で、絶やさないことにも意義があるかもしれない。