人生100年時代といわれる中、趣味や仕事、運動に熱中し、輝いているお年寄りは多い。9月16日の敬老の日を前に、101歳のお年寄りを囲んだ交流会が小谷村で開かれた。
沖中さん「長生きには努力も必要」/辻さん「役に立つこと張り合い」
「人生はつらいよ。半面、楽しいこともある。長生きしなきゃ面白くないよ」(沖中さん)、「喜びも悲しみも生きていればこそ」(辻さん)。大正から令和まで、激動の1世紀を生きてきた2人の言葉は胸に染みる。
9日に小谷村複合拠点施設おたりつぐらで開かれた「重陽の節句100歳&菊の交流会」(村集落支援係主催)。2人を囲み、9人が人生の思い出や元気の秘訣(ひけつ)を聞いた。
沖中さんは同村で生まれ、山師や製材などの仕事に携わった。大分県生まれの辻さんは、35歳の時に夫の転勤で現在の安曇野市で暮らし始め、その後に同村の栂池高原でペンションを営んだ。
青春時代に戦争 思い出は「軍隊」
交流会は、「両親のこと」「人生とは」といった共通の質問に2人が答える形で進んだ。「生きてきた中で一番楽しかったこと、感動したこと」の問いに、沖中さんは「釣り!」と即答。幼い頃から興じ、「去年は孫と出かけた。この年になってもまだ行かっと(行こうと)思ってるだでね」。辻さんの回答は、閉業後も続く宿泊客からの便りや来訪。「本当に宝です」と破顔した。
「思い出の場所」の回答は、「軍隊」や「軍需工場」。戦時下の記憶は若かった2人の心に深く刻まれている。「私たちの青春は、戦争の真っただ中。そこをくぐり抜け、よく100歳まで生きられたなと思う」と辻さん。「つらかったこと」は、両親や子どもとの死別を挙げた。
生活リズムを尋ねられると、睡眠時間は4~6時間ほどと短め。沖中さんは布団に入り、入眠前に1日の出来事を振り返って反省するのが日課という。長年、自分で育てたアロエを使ったアロエ酒、最近では「養命酒」を愛飲し、食事は腹七分目。「いろんな努力をしないと長生きはできない」と感じている。料理好きな辻さんは、夕食に副食6、7品を作ってバランスの良い食事を。外出時は服装に気を配りアクセサリーも着けておしゃれも忘れない。
2人とも、手仕事が得意だ。沖中さんは入居するケアハウスで入居者に折り紙や工作を、中学生には布草履作りを教えたり、手芸が趣味の辻さんは能登半島地震被災地支援などに役立てる刺しゅう入りの「チャリティーぞうきん」作りに仲間と励んだり。「ちょっぴりだが役に立っていると思うと、とても張り合い」と辻さん。
沖中さんは、軍隊で仲間と歌を歌ったことを「楽しい思い出もあった」。参加した同村の60代の女性は「戦時下はつらいだけのイメージだったが、前向きだから長生きができるんだ」と心を動かされた様子だった。
若い世代へは、「人との絆を大切にしてほしい」と沖中さん。辻さんは「人生の経験に無駄な物はなし」などの言葉を雑巾に刺しゅうする。飾らない言葉の端々には100年の人生が映り、凝縮されている。