食と遊びワクワク詰め込んで
ピザやハンバーガー、おにぎりにスイーツ、アルコール─と、各地のイベントでいろいろな種類のキッチンカーを見かける。
子ども向けのイベント企画、運営などを手がける会社「Another M&D」(長野市)は今月、ユニークなキッチンカーを発車させた。形にしたのは安曇野市の会社で、同市の子どもたちも仕上げに協力。いろいろな工夫を詰め込んだ。
イベントは子ども向けなのに、キッチンカーのメニューは大人向け。食べ物しか売らない─。もやもやした気持ちを抱えていたAnother─の勝山美保社長(41)は、「料理やスイーツなどを待つ間も楽しめ、遊べるキッチンカーが実現した」。
WSスペースも家族で楽しんで
新しいキッチンカーは、1トントラックを使用。キッチンカー部分はブルーの地にブロックを描いたデザインが印象的だ。車から取り外すこともできる。提供するのは台湾のスイーツ、QQボールを進化させた「恐竜のたまご」やマカロン。ここまでなら通常のキッチンカーと変わらないが、提供部分には3メートルほどの大きなオーニング(日よけ)が付く。テーブルを取り付けると、ワークショップができるスペースが出来上がる。
提供を待つ間、絵を描くことなどができ、描いた絵はマカロンに焼き付けたり、キーホルダーにしたり。恐竜のたまごをテーマにしたデジタル紙芝居が、常にモニターで流れている。提供部分の後ろ側にはホワイトボードがあり、落書きができる。食べ物の調理提供に遊びの要素をプラスした、珍しいキッチンカーだ。
Another M&Dの勝山美保社長は、子ども向けのイベントを企画したり、参加したりしていたが、「小さい子どもの食べ物が少ない。大人も子どもも一緒に食べられるものが出せたら、もっと家族の時間が盛り上がるのではないか」と感じていたという。
安曇野の会社が思いを形にして
その思いを形にしたのは、移動販売車、キッチンカー製作の「STUDIO MA」(安曇野市豊科南穂高)だ。
同社は、基本的に一台一台オーダーメードでキッチンカーを作る。子どものためのキッチンカーの依頼は今回初めて受けたという。「この形に収めるのが大変だった。設計の段階で細かな調整もあった」と共同代表の等々力昭浩さん(41)、佐藤信之さん(46)。
デザインは、デジタル紙芝居に出てくる恐竜の家をイメージした。子どもに仕上げをしてもらおうと、外観の仕上げを安曇野市内の小中学生13人と、南安曇農業高と梓川高の美術部員9人に任せた。今月8日に、水性ペンキで色を着けたり、模様を描いたりした。
恐竜のたまごはサツマイモの味を生かしたもちもちした食感が特徴という。このままでも食べられるが、ジャムや生クリームなどのディップを付ければ、味の変化が楽しめる。卵形の厚紙のプレートで提供されるので、手にした子どもに喜ばれそうだ。じゃがいも味もある。ハロウィーンの時季はカボチャなど、季節に合わせた物も作る。
母親らに向け、ハンドマッサージなども考案中。保育士の資格を持つ勝山社長は子どもを預かることも検討していて、母親らがゆっくりできる場にもしていきたいという。
県内外での稼働を模索していて、「小さい子の遊び場、楽しめる場にしたい。母親が一息つける場にもできれば」。食と遊びなどのワクワクを詰め込んだキッチンカーは、動き出したばかりだ。Another M&D TEL026・214・3840