大町の魅力引き出す「北アルプス国際芸術祭」 11月4日まで市内各地で秋を彩る個性豊かな作品群

地域と水の関係性にインスピレーションを受けたケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレットの作品。無数のレンズに囲まれ、周囲の風景や世界の見方を再認識できる(仁科神社北の森)

大町市の魅力を引き出す現代アート作品やパフォーマンスが披露される、3年に1度の「北アルプス国際芸術祭2024」(実行委員会主催)が11月4日まで、市内各地で開かれている。3回目となる今回は、11の国と地域の37人・組のアーティストが、大町という土地の成り立ちや大自然、人々がたどった歴史、育まれた文化に触発され、生み出した個性豊かな作品が、秋の大町を彩る。作品の一部を紹介する。

11の国と地域37人・組のアーティストが参加

芸術祭は、各地で地域型芸術祭を手がけるアートディレクターの北川フラムさんを総合ディレクターに、「水・木・土・空」をコンセプトに開催。2021年の前回までの北ア芸術祭で制作された作品も含め、計38点が披露されている。
作品の舞台は屋内外を問わず多彩だ。旧高校校舎や空き店舗、神社、博物館、猟師小屋、旧トンネル、公園、湖畔など。いずれの作品も場の持つ雰囲気と作家の感性の融合とで成り立つ。制作には土地の材料を使い、地元を含むボランティアが携わったものもあり、大町でしか生まれない作品群だ。美術館とは違い、それぞれの作品がある場所にわざわざ足を運ぶ必要があるが、移動の道中での景色との出合いなども醍醐味(だいごみ)の一つだ。

美麻地区の麻畑だった場所で採取した植物を、黒部ダム建設関連の事務所で使った窓ガラスに挟み、焼成した佐々木類さんの「記憶の眠り」。土地の記憶を封印するイメージの作品(旧中村家住宅)

木崎湖畔(平)の仁科神社北側の森に現れたのは、眼鏡レンズ1万4千個余を使った円柱状のカーテンを二重につるしたインスタレーション(空間芸術)「ささやきは嵐の目のなかに」。カナダのユニット、ケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレットの作品だ。レンズ越しに見る森の大木、穏やかな水面、黄金色に輝く対岸の水田など、肉眼で見るのとは違う不思議な世界に導かれる。
雨上がりに訪れた東京都の女性(60)は「雨が幸いしてレンズの水滴が美しく、きっと晴れの日もきれいなはず。自然の中で行う芸術祭の良さが堪能できる作品」。同市大町の中村正樹さん(29)は「レンズに付いた雨粒がかわいく、ここから眺める対岸の景色はすてきで新鮮。新しい発見ができた」と目を輝かせた。
八坂公民館を包み込むようにぐるっと囲んだ竹の巨大インスタレーション「竹の波」は、芸術祭参加2回目のヨウ・ウェンフーさん(56、台湾)の作品。地元住民の力を借り、地元の竹も用いて作り上げた大作は土地に溶け込み、強いインパクトを与える。「いろんな鑑賞者の声も作品の一部」とヨウさん。
今芸術祭の展示作には、作品の中に身を置けたり体感を伴ったりするものもあり、作品をイメージしたスイーツ巡りの企画も。難解に思われがちな現代アートだが、肩肘張らずに個々の感性で大町の魅力と一緒に楽しんでみては。
鑑賞は午前9時半~午後4時半、水曜休み。10月4、5日、12~14日にパフォーマンス公演あり。詳細は公式サイトまたは実行委事務局TEL0261・85・0133

八坂公民館の建物を編み込んだ竹でぐるりと囲い込んだヨウ・ウェンフーさんの「竹の波」。波のような曲線が美しく、そのスケール感も鑑賞者を圧倒する


【作品鑑賞パスポート】作品を1回ずつ鑑賞できる。3000円(16~18歳は1500円)、15歳以下は無料。JR信濃大町駅前インフォメーションセンター、プレイガイドなどで扱う。塩の道ちょうじやは入館料200円が別途必要。作品ごとの個別鑑賞券は300円(旧大町北高校会場は3作品で600円)。
【アートバス】同駅前インフォメーションセンター前発着で、市街地以外の展示場所をほぼ巡る専用バス。全3コース(各午前、午後1便ずつ)を運行。2500円。要予約。