武居さん(中央)も熱演(東京芸術祭 2024 東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』(第一幕より) 撮影:細野晋司)
松本市の俳優・武居卓さんも1人7役で
まつもと市民芸術館(松本市深志3)で10月5、6日、「三人吉三廓初買(くるわののはつがい)」が上演される。幕末の歌舞伎作者・河竹黙阿弥の原作を、古典歌舞伎を現代の視点で描く「木ノ下歌舞伎」(木ノ下裕一さん主宰)が作品化。第1弾の東京公演が9月に始まり、初参加の松本市の俳優・武居卓さん(39)は1人7役を熱演している。
偶然「吉三郎」という同じ名を持った3人の盗賊の物語(三人吉三)と、花街・吉原(廓)を舞台にした人情劇の交錯が原作。
作品が初演された安政年間は大地震や疫病に見舞われ、桜田門外の変が起こる動乱期。劇中では盗賊や血縁関係のない家族の因果応報や、「地獄の場」では亡くなった人が地獄で楽しそうに宴会する姿を描くことで遺族の心を慰めるなど、当時の社会背景が反映されている。
今回は同館芸術監督も務める木ノ下さんが補綴(ほてつ)(台本の編集)をし、粋でエンターテインメント的な手法が得意な杉原邦生さんが演出。現代歌舞伎で上演されない“廓”部分など全幕を再現し、群像劇として描く。
武居さんは、冒頭約10分間で何役も登場するなど幅広い役を熱演。稽古では、本稽古の前に歌舞伎の舞台映像を見て完全再現する“キノカブ流・完コピ稽古”を10日間体験した。
歌舞伎独特のせりふの抑揚や所作などに理解を深めたことで現代劇に生かせていると言い、「俳優が皆でバトンをつないでいくような芝居。江戸時代にタイムスリップした感覚になり、展開も速いので見る人を飽きさせません」と手応えを話す。
「伝統的な『三人吉三』を知っている人にも“こんなふうに楽しめるんだ”という新鮮さと驚きがあると思う。めっちゃ頑張っているので期待してください」と武居さんは話す。
両日とも午後1時開演。全席指定一般5400円、25歳以下2千円。問い合わせは同館チケットセンター℡0263・33・2200(午前10時~午後6時)