マスターインストラクター伊藤きくみさんに習う 喉や全身鍛えるスポーツボイス

声が出にくい、むせる、食べ物がのみ込みづらくなった─などの不調を感じながらも「年のせいだから仕方ない」と諦めている人も多いのでは。声帯など喉をはじめ、全身の筋肉をほぐして鍛える「スポーツボイス」。誤嚥(ごえん)予防や自律神経のバランスを整える効果があるという。マスターインストラクターで福祉施設などで講座を開く伊藤きくみさん(46、松本市)のレッスンを体験した。
スポーツボイスは音楽のリズムに合わせて声を出しながら体を動かす全身運動。椅子に座った状態でもできるので、高齢者や障がい者にも向いている。
レッスンは、アップテンポな曲に合わせ、肩甲骨や股関節周りを動かす運動からスタート。驚いたのは、動きながら常に声を出すこと。「呼吸を止めないので血液に酸素が巡り、筋肉が柔らかくなる」と伊藤さん。
表情筋を思い切り動かす運動では、リズムに乗って顔と体も一緒に動かす。「恥ずかしがらないで!」と伊藤さんの元気な声。「写真に写っても本人と分からないくらいの顔になったら大成功」の言葉に笑いが起きた。
音の高低を繰り返すハミング、吐く息を交ぜた裏声、「ハッハッ」と、腹筋を使う「ドッグブレス」など、普段は使わないような声や息遣いをする。黙ってするよりも、喉や舌、体の内側などの筋肉を使った感覚があり、さらに声を出した分、爽快感も増したように感じた。
百瀬喜美子さん(67、松本市)は、看護師としてお年寄りに接した経験から、嚥下能力を鍛える必要性を感じ、5年以上前にこの運動を始めた。「せき込みが少なくなり、歯磨きのときに口が大きく開くようになった」とうれしそう。
半年前から始めた出口幸枝さん(78、同)は「喉の筋肉を動かすことを意識するようになった。参加者との交流も楽しい」と笑顔で話した。
伊藤さんは「喉を鍛える運動で体の不調が改善できることを多くの人に知ってほしい」と強調。参加者の多くが60、70代という現状から、「女性は産後ケアや年を取ったときの子宮脱の予防、男性は前立腺の運動になる。声がよくなると仕事にも好影響を及ぼす」と、若いうちから始めることを勧める。
レッスンは毎月第2・4水曜、午前9時半~10時半。松本市笹部のグッドライフスペース。塩尻市や山形村でも教室を開き、出張レッスンも行う。