遊休農地を活用しほうきを特産品に―安曇野ほうきプロジェクト

安曇野市穂高有明にある遊休農地。草が生い茂るだけでなく、栽培していたリンゴや栗を狙い、猿や熊が出没する、周辺の農作物を食い荒らす―。そんな悪循環を断ち切ろうと、周辺の住人らが「安曇野ほうきプロジェクト」を昨年スタートさせ、今年から活動を本格化させた。
材料となるホウキモロコシを遊休農地の一部で栽培、収穫、脱穀する。ほうき作りの講座を開いたり、イベントで販売したり。電気を使わない、自然に返る―など、SDGs(持続可能な開発目標)につながるほうきの魅力もPRする。
来年はさらに仲間を増やし、ほうきの輪を広げたい考えだ。メンバーは「『安曇野ほうき』として地域で特産化したい」と張り切る。

農作物被害解消し特産開発へ

「安曇野ほうきプロジェクト」の中心メンバーは、会長の丸山美幸さん(41、池田町会染)、副会長の百瀬佳明さん(62、安曇野市明科七貴)、中村治幸さん(73、同市穂高有明)、野中由紀子さん(67、同)、等々力秀和さん(82、同市豊科南穂高)の5人。
9月21日は同市穂高有明の立足地区の施設で、ホウキモロコシの栽培を手伝った会員を対象に、手ぼうき(はたきぼうき)作りの講習会を開いた。午前と午後の2回、子どもから大人まで計25人が参加した。
束を作ったり、麻糸で編み込みをしたり。収穫を手伝った住久美枝さん(54、同市豊科南穂高)は「家に和室があり、ほうきに興味があった。わらで作ると軟らかいが、ほうきもろこしは丈夫でいい。サッシや狭い場所の掃除に使いたい。飾っておいてもかわいい」などと話した。
穂高有明地区には、10年ほど前に持ち主が亡くなった遊休農地が約1ヘクタールある。リンゴや栗などを目当てにニホンザルが出没。周辺の農作物を食い荒らす被害も増えている。草が生い茂っているので、出てきやすいらしい。
怖い物知らずの猿は、網戸を開けて住宅にも侵入し、家の中でふんをしたり、驚いた住人が転んでけがをしたりといった困り事も。熊の出没も問題になっている。
そこで目を付けたのが、ホウキモロコシの栽培だ。「手を入れて、人のテリトリーだとはっきりさせれば、来にくくなるのではないか」と野中さん。その上ほうきには、電気を使わない、音がうるさくない、ぱっと手にして気軽に掃除ができる―などの長所がある。魅力を感じる人は多いと考えた。
昨年は1・5アールで試験的に栽培し、今年は県の地域発元気づくり支援金を受けて、10アールで栽培。プロジェクトの会員も約30人になった。5月に種まき、6、7月に3回草取りをし、8月に収穫した。農業を営む中村さんがメンバーに加わったことで作業もはかどり、収穫も増えたという。
真夏に一本一本切ったり折ったりする収穫作業は、骨が折れる。収穫後は穂を広げ、3日間ほど天日干しにする。実や来年用の種取りも、昔ながらの足踏み脱穀機を使うなど機械化とはほど遠い。手間暇はかかるが、「ほうきを一から手がける作業は楽しい。自分で作った物は愛着がある」と野中さん。
市販のほうきには、安くない値が付けられている。だが、「畑仕事の大変さが分かれば、ほうきに対する理解も深まるのではないか」。
手ぼうき(1500円~)、座敷ぼうき(5千円~)はクラフトショップ安曇野(同市穂高)、イベントの「安曇野さんぽ市」などで販売する。来年はさらに関わる人を増やしたいといい、「作り手が増えれば、安く流通し手に入れやすくなる」と期待する。「ほうきを安曇野の特産品に」「安曇野ほうきのブランド化」といった夢の実現に向けて力を合わせる。
問い合わせは野中さんTEL090・4464・9771